匠名/メーカー名:迎山直樹
兵庫県の椅子メーカー・TenonのST-chair。
これは、グッドデザイン賞 2015 BEST100 特別賞「ものづくりグッドデザイン賞」を受賞したというチェアです。
じっくりと眺めてみると、きわめてシンプルな造形です。
デザインとして変化球を投げていないので、シルエットの美しさをとことん妥協しないで作られたのが分かります。
すっきりとして、どこも奇をてらっていない。素直な形をした美しい椅子です。
こちらは椅子職人の迎山直樹さんが手掛けた品です。
迎山さんは30歳を過ぎてから椅子作りの世界に飛び込み、2009年に兵庫県佐用町にTenonを設立しました。
2社ほどの家具製作会社で勤務しながら知識を学んだのみで、専門学校に行って習ったわけでもなく、師匠についたわけでもなく、ほぼ独学でここまでの椅子作りの技術を身につけたという方です。
もともとその業界にいたわけでもない人が、30歳を過ぎてから、ほぼ独学でものづくりの職人技を身につけようとする。
これは、かなり勇気がいりますよね。
社名の「Tenon(テノン)」とは英語で「ホゾ」という意味。ホゾとは、宮大工の技術としても用いられる、木材を接合する技法。
木材につくった、ホゾ穴とホゾをすきまなくピタッと組み合わせ、接合して作りあげるやり方のことです。
Tenonの椅子はホゾの技法で作られているので、構造的にとても頑丈で強いのだそうです。
JR九州の寝台特急ななつ星の椅子も、迎山さんがデザインされたものだそう。
しかしデザインだけを行うデザイナーとは少し違い、Tenonの椅子は迎山さん自身が作り手(職人)として手掛けています。
しなやかで素直な造形の椅子は、どこに置いてもしっくりと馴染み、空間を美しく演出する逸品です。