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日本のものづくりデザイナー11~デザイナーユニット・MARLC(マアルク)~

美大時代の同級生が結成したデザイナーユニットMARLC


MARLC(マアルク) (左)平田ことこ氏(右)竹本真実 参照:https://www.japandesign.ne.jp/interview/tokyo-craft-marlc-1/

MARLC(マアルク)とは、平田ことこ氏と竹本真実氏の2人が結成するデザイナーユニットの名称です。新しい東京の伝統工芸品を創造する「東京手仕事プロジェクト」の発表会で賞を受賞し、注目を浴びました。伝統工芸という職人の世界とデザインをつなげるプロジェクトで、多くのことを感じたという2人。そのデザインコンセプトや職人との関わり方などを見ていきたいと思います。

東京手仕事プロジェクトで2商品が受賞


ゆらぎ盆栽 松 参照:https://www.japandesign.ne.jp/interview/tokyo-craft-marlc-1/

MARLC(マアルク)の2人が参加した「東京手仕事プロジェクト」。これは、簡単に言えば、デザイナーと伝統工芸職人がコラボレーションをする企画です。
東京の現存する伝統工芸は江戸切子や東京染小紋、江戸指物など、東京都が伝統工芸品として指定するものだけで41品目もあります。この東京の伝統工芸品の繊細な技術とデザイナーが協働することで、暮らしをうるおし豊かにするための新しい「東京の伝統工芸品」を生み出し、手仕事の魅力を国内外へ発信することを目的としています。
そのプロジェクトに参加して、MARLC(マアルク)の2人が見事受賞した商品が「ゆらぎ盆栽」「東京本染 てぬぐいおくるみ」の2つ。それぞれ、2018年に東京都知事賞と東京都中小企業振興公社理事長賞を受賞しています。

ユニット結成、そしてプロジェクト参加のきっかけとは?


本物の松のチクチクしたような葉は、絹糸だけでつくられています 参照:https://www.japandesign.ne.jp/interview/tokyo-craft-marlc-1/

平田氏と竹本氏は、もともと美大時代の同級生でした。就職はそれぞれ違うデザイン会社でしたが、お互いデザインの道を歩んでいました。2人は就職後も交流を続けており、平田氏がフリーになると決めたときに「一緒に何かをやりたい」という思いが重なり、「MARLC(マアルク)」を結成したのです。ユニット名の由来は「物事を丸く整える」という意味が込められているそうです。ちなみに、平田氏はフリーランスで活動していますが、竹本氏は現在も会社員でグラフィックデザインを中心に仕事をしています。そして、会社以外の活動のときだけ「MARLC(マアルク)」の名称を使用するそうです。
この、異色とも言えるユニットが 東京手仕事プロジェクトに参加したのは、平田氏がきっかけでした。「知り合いのデザイナーさんが参加していることもあったのですが、開発していくというプロセスを持ったプロジェクトってコンペでは少ないですし、プロダクトデザインに関わるきっかけとしていいなと思いました」というように、自分の将来を見据えてのこと。そして、ユニットを組む竹本氏にもこの話をすると、「一緒にやりたいと思って後追いした感じです。普段の仕事では職人さんと知り合う機会も少ないのですごく興味もありました」と、すぐに参加を決めたそうです。

伝統工芸のデザインはコミニュケーションがより重要になる


東京本染 てぬぐいおくるみ 参照:https://www.japandesign.ne.jp/interview/tokyo-craft-marlc-2/

東京手仕事プロジェクトは、職人とデザイナーが参加するマッチング会という場で、デザイナーがプレゼンをおこない希望が一致すればチームを組む、というシステムです。、「MARLC(マアルク)」では、「ゆらぎ盆栽」で有限会社岡半と、「東京本染 てぬぐいおくるみ」では東京和晒株式会社とチームを組んで商品を製作しました。職人との共同作業という、初めての体験を2人はどのように捉えたのでしょうか。

感覚のギャップを埋めるコミニュケーション


参照:https://www.japandesign.ne.jp/interview/tokyo-craft-marlc-2/

職人と共同で仕事をする上で、竹本氏が感じたのは、感覚のギャップを埋めるための努力を惜しまないこと。普段よりもさらにコミニュケーションが重要になると語ります。例えば、「ゆらぎ盆栽」の場合、盆栽職人の意識ではシンプルにデザイン化した松のイメージに「これが松に見えるの?」という疑問が出たそうです。
しかし、職人の意見は聞きつつも、妥協してしまっては中途半端な商品に成りかねません。コミニュケーションを密にしながら、デザインの意図を理解してもらい製作するという苦労があったといいます。結果的には賞も取れて「正解だった」と喜んでくれたといいますが、デザイナーと職人という感覚の違いをあらためて感じたそうです。それと同時に、このギャップは、コミニュケーションにより、埋められる確信も得たと語っています。

職人も新しい感覚を取り入れて、お互いの利益に


「ゆらぎ盆栽」と「東京本染 てぬぐいおくるみ」の商品リーフレット 参照:https://www.japandesign.ne.jp/interview/tokyo-craft-marlc-2/

「職人さんと出会ったことで新しいアイデアを出すことができたし、職人さんも新しい感覚を取り入れるきっかけになってもらえていると嬉しいです」と平田氏が語るように、デザイナーに伝統工芸の理解やコミニュケーションが求められるように、今後は伝統工芸職人も、デザインのことやトレンドなどを理解することが必要になるでしょう。
新しい伝統工芸品を生み出すためには、お互いに歩み寄り、お互いの利益のために行動することが求められます。「MARLC(マアルク)」は、その第一歩を踏み出したばりですが、今後も多くの挑戦をしてくれることと思います。そして、近い将来には、伝統工芸分野とデザイナーがコラボレーションした商品が、さらに注目を集めることになるでしょう。

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