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日本のものづくりデザイナー17~プロダクトデザイナー・大竹 愛希(おおたけ あき)~

福祉、地域産業とデザインの未来を見据える


大竹愛希氏 参照:https://www.kiratto-fukushima.jp/prelusion/prelusion.html?id=97&mode=&key1=&key2=&key3=

大竹愛希氏は、1979年福島県の生まれです。青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、桑沢デザイン研究所に入学。プロダクトデザインを学びます。地元福島の「NPO法人シャローム」に参加し、2006年からは同法人のデザイン部門関連会社である「合同会社楽膳」の代表に就任しています。ユニバーサルデザイン製品の企画販売を中心にしており、特に手に障害がある人を考えた漆器椀は、福島の地域産業にも貢献する製品として、注目を集めています。

さまざまな影響を受けた家庭環境や学生時代


楽膳椀 参照:https://rakuzenware.base.shop/

現在はデザイナーとして活躍する大竹氏。小さい頃から絵を描いたりものを作ることが好きだったといいます。一時は絵を描いて生活したい、などとも思ったといいますが、成長するにつれて現実的な側面からも一般的な大学に進学を決めました。
また、福祉関連への興味も両親が福祉関係の活動をしていたため、子供の頃から持ち始めていたといいます。その頃は、まだ障がいを持った人たちが社会に出るのは難しい環境でしたが、大竹氏は幼い頃から多くの人たちと接していました。
このような家庭環境を経て、大学で紛争や宗教の違いによる戦争を勉強していくうちに、視点が異なる環境が紛争を起こすこと、その解決には多様性が必要になることに気づきます。それは、日本社会、そして障がいがある人達の置かれている立場でも同様でした。大竹氏はこのとき幼い頃から感じていた、障がいを持つ人の不便さ、そして差別などを自分の好きだった絵を描く事を通じて解決したいと思うようになったのです。

ユニバーサルデザインを意識してデザイン学校へ入学


楽膳椀研ぎ出しタイプ 参照:https://rakuzenware.base.shop/

自分のやりたいことが明確になった大竹氏は、大学卒業後に桑沢デザイン研究所へと入学します。当時はユニバーサルデザインに関する授業はありませんでしたが、大竹氏は独自でユニバーサルデザインの視点を持ちながらデザインの勉強をしていきました。
卒業後は、両親が活動していたNPO法人シャロームの職員として就職。デザイン担当として働き始めたのですが、ほかにデザイン関係の職員はいなかったため、何もかも手探り状態だったといいます。ただ、それが、チャレンジするモチベーションともなっていて、プロジェクトの立ち上げに繋がり、グッドデザイン賞を受賞した漆器椀の開発へとつながるのです。

多様性を重視して、社会参加のためにも会社組織を立ち上げ


福島の果樹農家からの依頼で規格外りんごを使用したお菓子のパッケージをデザイン

ユニバーサルデザインの使いやすい器を考えた大竹氏。素材を木製にしたのは、当時のユニバーサルデザイン食器と言えば、プラスチック製の画一的なものが多かったからでした。木のぬくもりを感じ、障がいがない人にも使いやすく、手に取ってもらうデザインにしたかったといいます。しかし、完成までの道のりには問題もありました。

地元の工芸品、会津漆器を採用


福島の工業繊維メーカーが発売するバッグもデザイン

素材を木製にすることに決めた大竹氏は、地域ぐるみの活動を目指し、地元会津の漆器に注目をしました。しかし、作り手にとってはデザインの特徴である、障がいを持つ人にとっての「使いやすさ」は、工程が増え手間がかかる作業になります。普通ならコストや効率の問題から断られる可能性が高く、大きな問題点となっていました。
ただ、そこで諦めてしまってはいままでの苦労が無駄になってしまいます。さまざまな場所に交渉をして、紹介してもらった職人は、自身の父親も手首に障害があるため、積極的に協力を申し出てくれたのです。
こうして完成した漆器椀は「楽膳椀」という商品名で発売、2014年のグッドデザイン賞を受賞したほか、フランスの見本市にも出店し、海外からも高い評価を受けています。

「デザインは社会をつなげる」という気持ちを持って


福島産ワインのラベルをデザイン

「楽膳椀」を発売するにあたって、別会社を立ち上げたのは障がいを持つ人達にも社会活動に参加できる機会をつくりたかったからとの理由からでした。そして、会社として活動をすることで、福祉と地域産業を結びつける意図もあるようです。
「デザインは社会をつなげる」という気持ちを持って活動してきた大竹氏。最近では、地元の繊維メーカーと組んでオリジナルバッグの開発をおこなうなど、順調に成果を上げています。
多様性や視点の相違、それを差別や紛争につなげないために、デザインの力は非常に有効なのかもしれません。

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