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日本のものづくりデザイナー27~デザイナー・馬渕 晃(まぶち あきら)~

建築事務所在職中に異例のヒット商品を考案


馬渕晃氏 参照:https://www.assiston.co.jp/2323

馬渕晃氏は、1972年東京都の生まれです。建築設計事務所在職中の2009年、カップラーメンの蓋を食べ頃になるまで押さえてくれる人の形をしたおもしろアイテム「CUPMEN」という商品を考案。同様の商品では異例の100万個という大ヒットになり、現在ではデザイン事務所を立ち上げて独立をしています。今回は日常生活の中で「面白い」「楽しい」を味わえるユニークな商品を開発している馬渕晃氏をご紹介します。

子供の頃のトレース遊びから始まったデザインへの興味


CUPMEN 参照:https://koncent.net/interview/376

馬渕氏の父親は機械を設計する技師をしていました。そのため、自宅にもトレーシングペーパーなど設計図を描くのに必要な多くあったといいます。幼い頃の馬渕氏は、父親のデスクからトレーシングペーパーを発見して、透けて見える紙の面白さに感動。当時流行っていたウルトラマン怪獣カードをトレースすることに没頭しました。
また、時を同じくして自宅改装のため、大工さんの仕事を間近で見る機会もあり、「ものづくり」や「デザイン」といったことに憧れるようになっていったのです。そして、両親もそんな馬渕氏の憧れを応援していました。この頃の両親からもらった誕生日プレゼントは、なんと、ベニヤ板と大量の釘、ハンダゴテとハンダなどだったのです。

真面目につくった面白アイテムが大ヒット


ステンレスの円柱を斜めにカットして磨き上げた置き型の鏡。富山デザインコンペディション2016グランプリ作品 参照:http://www.akiramabuchi.com/pro-p-toyama.html

子供の頃の夢を叶えるべく、馬渕氏が進学したのは日本大学海洋建築工学科でした。卒業後は設計事務所に勤務して、建築士として働き、夢は大きく前進しました。
ただ、馬渕氏には建築という大きな視野以外にも、もう一つ日常生活で少し感じる不便さや味気なさを変えていくセンスがありました。それが大いに発揮されたのが、「CUPMEN」です。ユーモラスな姿勢でカップ麺の蓋を押さえてくれる人形、その発想は「カップラーメンにお湯を注いだ後、付属のシールや身の回りの文房具などでフタをしていたのですが、なんだかあじけないなーと思ったのが最初のきっかけです」と、語るようにちょっとしたアイデアでした。そこから、身体の色を変えて食べ頃を教えてくれたり、デスクなどに置いても楽しめる形を考えたりと、試行錯誤を続けることになります。「当時は本当に真面目にやっていました。サラリーマン時代でもあったので、終電で帰宅してから朝の4時、5時までモックをつくったりして、本当に真面目に苦しんでました(笑)」。そして、その苦しみは報われて、100万個という異例の大ヒットとなったのです。

ジャンルを超えて日々の暮らしを考える


肥前吉田焼の箸置き。普段はこのように家の形になっています 参照:https://www.assiston.co.jp/2323

「CUPMEN」の大ヒットを受けて、2011年には設計事務所から独立を決意、自らのデザイン事務所である「AKIRA MABUCHI DESIGN」を立ち上げます。独立後は富山デザインコンペディショングランプリ、東京手仕事プロジェクト優秀賞など、国内外での評価も上昇していきます。コンセプトは、「日々の暮らしが、少したのしく、少しうれしく、少しやさしくなるような『もの』 『こと』を考える」です。

ジャンルにとらわれない発想


家をバラすと4つの箸置きに 参照:https://www.assiston.co.jp/2323

馬渕氏は建築設計事務所の出身です。自らのデザイン事務所も一級建築士事務所として登録されていますので、もちろん内装や空間デザインの仕事もしています。同時に、「CUPMEN」の流れをくむようなプロダクトデザインやグラフィックデザインも手掛けています。日常のちょっとしたことからヒントを得て楽しいアイテムに昇華させていく、それが馬渕氏の個性とも言えるセンスでしょう。
例えば、高さ4センチの小さな家の形をした陶器。これは分解することによって、家族4人分の箸置きになるアイテムです。素材は400年以上の歴史を持つ佐賀県の肥前吉田焼で、地元の振興プロジェクトとして製作されました。伝統工芸品を日常生活にたのしく取り込む、まさに馬渕流のディレクションと言えるでしょう。

笑えるものほど真剣につくる


ご祝儀袋 KAMI-MEN 参照:http://www.akiramabuchi.com/pro-p-kamimen.html

クスリと笑えて、やさしい気持ちになれるのが馬渕氏のデザイン。その一つに、「KAMI-MEN」という商品があります。これはご祝儀袋として使用するものですが、覆面プロレスラーをモチーフにしているところがなんともユニークな商品で、覆面部分は実際にかぶることもできます。送る方も、もらう方も、ホッコリと笑ってしまう商品ですが、実はとても精緻な作りをしているのです。
覆面は8枚の紙を紙風船のように繋いで立体を製作していますが、実はパーツごとに形が違っていて、調整が非常に難しかったといいます。また、素材にはメイクにも使用される高級な不織布を使用し、手作りで仕上げています。
ユーモアのある、笑ってもらえるものほど真剣につくる。それが馬渕氏の考え方です。多くの人に笑ってもらえること、楽しんでもらえるためには、多くの試行錯誤を繰り返して製品化する苦労があります。ただ、その先には手に取ってもらえる喜びもある。だからこそ、真剣に真面目にクスリと笑えるアイテムをつくり続けていくのでしょう。

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