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あなただけの一着を。古着の魅力に迫る。

持続可能な社会を創造することが課題とされる昨今で、衣類を楽しくリユースする「古着」が若い世代で流行しています。その秘密と魅力に迫りました。

皆様は古着にどのようなイメージをお持ちでしょうか。単に古くて汚いと思っていたら大間違い、実はそのすべてが基本的に一点物で、その出会いは一期一会の「ヴィンテージアイテム」なのです。リユースして使うから、環境にも優しい。その一方で、最近は「絶滅危惧種」と呼ばれるようなものもあるそうで……どういうことなのでしょうか。

(出典: https://www.instagram.com/ber_net/)

古着とひとくちに言っても様々なジャンルがあります。海外から直輸入されたもの、日本国内で製造されたもの、未使用新品の値引き品からハイブランドの使い込まれた逸品まで、路線は多種多様。日本のブランド品でも年代物ならそれなりの値段が付くのが古着の世界の常識です。古い年代の衣料品は新しく作られないし、狙った商品が本当にお店にあるかどうかもわからない。だから気に入ったらすぐに購入すべき! という意味で「一期一会」の関係にあるのが我々と古着なのです。
その中でも私がよく行くお店では、ヨーロッパや北米から買い付けた直輸入の衣料品を販売しています。バイヤーさんが直接やり取りしているので、どの商品が入るかはその日の運次第、バイヤーさんの腕次第で変わります。基本的に状態もいいものが入ってきますが、ところどころシミがあったり、日に焼けていたりして、価格が低めに抑えられているものが入荷する場合も。今ではオンラインのショップも多いですが、一度試着してから決めるか、自分のサイズを把握して購入することをお勧めします。実際に私は、サイズを確認しないで購入した古着を1着持て余していて、年代物だから簡単に売りにも出せず、現在知り合いにお譲りしようかと画策しています。また、古着はその性質上脆くなっている場合が多いので、洗濯するときは洗濯用ネットに入れて手洗いコースで洗うなど、状態維持のためにも注意が必要です。
高値がつく古着は、北米やヨーロッパで着られたドレスなどが中心です。それらはざっくり言うと「化石燃料と同じ」なのです。例えば1970年代の衣料品が100あったとして、すべて売れてしまえば1970年代に製造された衣料品のうち、100着は(消費、とまではいきませんが)「蔵から出ていってしまう」ということになります。そのため、年代物のドレスはたとえユーズドであってもお値段が高めなのです。
最近では買い付けたヴィンテージのウェディングドレスで結婚式を挙げられるサービスがあったり、買い付けた布地をリユースして新しく縫い直したドレスを販売するお店が出てきたりと、新たな進化を続けているのがこの古着業界です。

(出典: https://ber-net.jp/ )

私がこの古着の魅力を知ったのは、前述した古着をお譲りしようとしている、知り合いのお姉さまがきっかけでした。古いものに魅力を感じる、というただそれだけで仲良くなれた奇跡のような出会いを経て、古着屋さんめぐりに連れて行ってもらった数年前から古着ライフは始まりました。そこで「古いものには多くの歴史が堆積していて、それを掘り返すような、宝探しのような楽しさがある」ということを教えてもらいました。蚤の市にもご一緒したことがあるのですが、それもまたアンティーク雑貨の「時代の流れを感じさせるレトロな雰囲気」に酔いしれた思い出があり……ともあれ、古着には「今の時代には無い」という意味でのある種の「新しさ」だったり「流行の回帰」を感じることができるのです。

ここで私の古着コレクションをご紹介します。日本製品は2着。今でも褪せない可愛さと、今の既製品にはない繊細な技術が詰まっています。花柄のブラウスはフリルが甘い印象ですが、パンツと合わせるとバッチリのバランスになります。黒のブラウスは襟元の刺繍が古着らしさ満点です。

こちらは輸入の商品。ドレスが中心ですが、スカートも。私は基本的にレトロな服装が好きなので、現代の既製品でもマッチするものを選んで着ています。特に気に入っているのが、この贅沢なレースが使われたペイズリーのドレス。店員さんとああでもないこうでもないとお話をしながら購入を決めた1着です。このレースは古着にしかないオリジナリティですね。また、こちらの花柄とグリーンのシンプルなドレスは着心地の良さで選びました。古着は基本的に一期一会、つまりサイズが合うかどうかも運次第なのです。自分には丈が長いだとか、締め付けられる感じがするだとか、体型の問題で着られないこともざらにあります。でもこの2着はプラスサイズ気味の私に嬉しいゆったり感なのです! そういう出会いにも感謝ですね。

お洋服ということになると、お金に糸目をつけずに使ってしまう私ですが、古着の魅力は単にコスパがいいということだけに留まりません。まさに現代社会の問題に切り込んでいくような考え方――すなわち「限りある資源を大切に使う」という発想が素敵だと思うのも、古着に入れ込んでいる理由のひとつです。
古着はリサイクルショップでも買えますが、それらも一度誰かが購入しているものです。袖を通したかどうかは関係なく、欲しいと思ったけれど情熱が冷めた、とかでポイポイ捨ててしまうのは大変もったいないことです。燃やせばCO2が出るし、せっかく作られたのに誰かの身体を覆うことなくゴミ箱行きとはなんとも切ない話です。だからこそ、リユースの発想が現代ではマストです。自分にとって素敵だと思えれば、どこで買ったかはそんなに重要じゃないのです。プチプライスのコーディネートも、古着のコーディネートも、その人にとって心地よく、似合っていれば等しく価値があるのです。

こちらでたくさん紹介しているBernetという古着屋さんは、現在古着からリユースした布地を使ってロングドレスを制作・販売しています。こちらも一点物ですので、少々お値段は張りますが、美しくて「古いものの良さをそのままにデザインを新しくする」という点において非常に優れています。現在すべての商品が完売ですが、これそのものが昨年始まったプロジェクトでして、まだまだこれから更新されるはず。ですので、これからオンラインショップも覗いてみてください。古着はリユースするものなので、ハンドメイドをされる方も「出来上がっている布地を買う」イメージで古着を買って、ご自身の作品の一部にされると良いかと。実際にそうやって腕を磨いているハンドメイド作家さんは多いですし、自分の着なくなったアイテムを(売るのではなく)もっと素敵にアレンジする方法を考えるというのも楽しいですよね。

(出典:https://bernet-vintage.jp/  )

視覚から得る情報が多い人類は、まず見た目で判断します。だから着るものにこだわる人は多いと思います。おしゃれさんと呼ばれる人たちはみんな、その人のライフスタイルを体現したような恰好をしている。それがすごく面白いですし、そういう価値観の表明もあったっていいじゃないか、とも思うのです。だから着るものにもう一度目を向けて、無駄はないか、環境に負担をかけていないか、そして「自分らしさを演出できているか」を確認してみてもいいかもしれません。その過程で「なんかしっくりこないな」という人に、古着という選択肢を提示したくて、この記事を書きました。着飾る自分を、そしてあなたを引き立てる一点物の古着を、できるかぎり愛してあげてくださいね。

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