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コンマ数ミリの世界で腕をふるう、彫金師の驚くべき技術とは。

突然ですが、皆さんは普段、アクセサリー・ジュエリーは身につけますか?

この記事を読んでいただいているということは、普段から身につけるアクセサリー・ジュエリーに対してこだわりを持っている方が多いのではないかと思います。

アクセサリーやジュエリーなどの装飾品は、使えば使うほどに愛着が増し、長年連れ添った相棒のような存在になりますよね。

そして、一生涯使えるものだからこそ、決して妥協はしたくありません。

近年では、結婚指輪をはじめとした、オーダーメイドアクセサリー・ジュエリーを作りたいといった人も増えてきています。

そんなアクセサリーやジュエリーを制作するのが、『彫金師』と呼ばれる職人です。

今回は、そんな彫金師の技術と、オーダーメイドアクセサリー・ジュエリーの魅力あふれる世界にお連れします。

彫金とは?

まずは、『彫金』と『彫金師』について掘り下げていきます。

かつては、金属の表面に、『鑽(タガネ)』という鋼を用いた工具を使用して模様を掘る技法のことを『彫金』と呼びました。

彫金は、古くからの伝統芸能として確立されており、仏壇や仏具などにも装飾として施されていました。

しかし、現在では、彫金というと、アクセサリーやジュエリーを制作するための技法のことを指し、彫金、鍛金、鋳金の意味合いも含まれます。

現代では、こういったアクセサリーやジュエリーなどを特殊な工具を用いて手作業で制作する職人を『彫金師』と呼びます。

彫金には様々な技法が存在し、その技術は一朝一夕で身につくものではなく、習得するまでには相当な年月を要します。

彫金技術の歴史は大変古く、西暦500年の古墳時代時期から脈々と受け継がれてきました。初期ごろは、装具や馬具などに装飾として施されていましたが、いつしか武士の刀や甲冑などにも施されるようになり、江戸時代には、鑑賞のためだけの装飾も施されるようになりました。

このように、彫金は、約1500年以上の歴史の中で、その形を変えながら、現代に受け継がれてきました。

伝統的な『すり出し』技法

出典:stir craft 

彫金師は、長い年月の中でその形態を変化させてきました。

現在では、伝統的な技法を用いて製作を行う場合と、現代的な技法を用いて行う、二つのパターンが存在します。

伝統的な技法として真っ先に挙げられるのが、『すり出し』と呼ばれる技法です。
かつての彫金師は殆どこの技法を用いて、装飾品の製作を行っていました。

すり出しとは、平らな鉄(板金)から、切る・削る・叩くなどを繰り返しながら装飾品を形作っていきます。

鉄を熱し、叩くことで、密度の高い金属に仕上がり、より頑丈に、重みのある作品に仕上がります。

例えば、すり出しを用いて指輪を作る場合、板金と呼ばれる材料を糸鋸(いとのこ)、金切鋏(かなきりはさみ)などの道具で必要な長さに切り出し、ヤスリで表面を削り出し、先ほど取り上げたタガネで装飾を施していきます。

指輪の形状が出来上がったら、さらに細やかな目のやすりを使って、表面をピカピカに磨き上げます。
そして最後に、必要に応じて「色揚げ」と呼ばれる、金属を変色させ、作品に深みや味を出すための着色を行い、作品が完成します。

現在、すり出し技法で製作を行なっている職人は随分と減ってしまいましたが、”市松”などのブランドでは、現在もなお、一人の職人が全ての作品を手作業で、しかもすり出し技法を用いて製作を行なっています。

もちろん、その工数と高い技術が必要とされることから、それなりの時間と価格になりますが、手作業で制作されたアクセサリーは、型のあるものとは違った魅力を放ち、より深い愛着をもたらせてくれるでしょう。

現代的な『ロストワックス』技法

ロストワックス

出典:stir craft

前述した、『すり出し』技法が伝統的な技法であるのに対し、現在では多くの彫金師が、『ロストワックス』と呼ばれる技法を用いて作品を製作しています。

ロストワックスとは、ワックスと呼ばれる、ロウを固めたもので、ロストワックス技法は、そのワックスを削り出して原型を作成し、炉で溶かしたワックスに金属を流し込むことで、ワックスの形通りの作品を作り上げます。

すり出しと比較しても、ロストワックス技法は、その形や大きさにかなりの融通が効くこと、そして、ワックスを削り出すだけで意図通りの作品を作ることが可能なので、様々な作品を多く作りたいという彫金師が、このロストワックス技法を用いています。

ただ、いくらワックスを用いた製作がすり出しに比べて楽だとしても、もちろん素人が一朝一夕の努力で実現できるようなものではありません。

今となっては、驚くべきことに、原型となるワックスは一般でも入手することができ、職人でなくともロストワックスを用いた製作は可能となっています。

しかし、ワックスひとつを削り出すにしても、様々な道具が必要になり、細やかで美しい装飾はやはりつ長年技術を磨いてきた彫金師にしか出せないでしょう。

筆者も、実際にワックスを購入し削り出したことがありますが、ワックスは想像以上に硬く、かなりの力が必要になり、細やかな装飾などはほぼ不可能でした。

あんなに硬いワックスから、美しい装飾を施し、生み出す彫金師は、やはりとんでもない時間をかけて技術を磨いてきたということを、身に染みて感じました。

しかし、こういった職人の技術を身近に体験できるというのは、アクセサリー・ジュエリーをより愛するためにも、そして、彫金師の技術の高さを知るためにも、とても良いのではないかと感じます。

ぜひ一度、自身でワックスを削り出し、自分だけの作品作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。

「鋳造」と「鍛造」

ここまで、彫金師が行う二つの技法をもとに、その技術力と難しさについて触れてきましたが、実は、今売られているアクセサリーの多くは、『型』のあるものが多いのです。

最近では、ジュエリーデザイナーと呼ばれる職業もあり、3Dプリンタを駆使してプラスチックの型を作成し、そこに金属を流し込むことで、同じものを、大量に生産できるようになりました。

しかし、型を元に作られた作品は、曲がりやすかったり、折れてしまったりと、その耐久性に不安が残ります。

アクセサリー・ジュエリーの中でも代表的とも言える、指輪を製作する場合を見てみると、その製法には大きく分けて「鋳造(ちゅうぞう)」と「鍛造(たんぞう)」の2種類に分けることができます。

「鋳造」は、原型を元に成型した空洞に対して金属を流し込む製法で、前述した『ロストワックス』の技法がこれにあたり、型のあるジュエリーも同じであると言えます。

一方、「鍛造」は金属を叩いて鍛えながら成型するので、密度が増し、より金属が硬く、頑丈になるわけです。前述した「すり出し」の技法が、これに当たります。

鍛造は鋳造に比べて強度の高い製品を作ることができるものの、細やかな紋様を入れたり、装飾を施すなどの複雑なデザインは難しいというデメリットもあります。

鋳造は、前述したように、デザイン性が高く、個性のある製品を作ることができますが、その耐久性に不安が残ります。

これらの利点・欠点を鑑みながら、結婚指輪であれば長く身につけるために、鍛造が得意な彫金師に、ファッション感覚の指輪などであればデザイン性の高いデザインが作れる、鋳造を得意とする彫金師へオーダーするなど、場合に応じて検討してみるのがいいかもしれませんね。

なぜオーダーメイドが選ばれるのか?

結婚指輪をはじめとして、近年ではファッション用に身につけるアクセサリー・ジュエリーを、オーダーで作られるかたも増えてきています。

それは一体なぜなのでしょうか?

やはり、これはひとえに、『想い』と『愛着』にあるのではないかと感じます。

普段からずっと身につけるものには、自然と想いがこもり、どんどん愛着が湧いてきますよね。その代表格が、指輪などの装飾品ではないでしょうか。

特に、結婚指輪などは、生涯身につけるものなので、型どおりのものを作るよりは、彫金師にフルオーダーで一から作ってもらった方が、愛着が沸きそうですよね。

最近では、工房に立ち寄り、彫金師の力を借りながら自身でヤスリで削り出したり、工具を使って曲げたりといった、一部の過程を自分たちで行えるような工房も増えてきています。

もちろん、自身で全てを行うことはできないため、仕上げや、その他重要な工程は彫金師が行うようですが、一部でも自分で手を加えることができるということは、大きな魅力であるように思います。

また、お持ちのダイヤモンドやルビーなどの宝石から、指輪やネックレスなどを製作できる工房もありますので、一度お好みの工房・彫金師を探してみてはいかがでしょうか。

最後に

いかがでしたか?ここまで、彫金について、そして、彫金を行う彫金師の技法やその種類について言及してきました。

彫金は、実に1500年以上の歴史をもつ伝統芸能と言えますが、時代の流れに伴って、彫金の形態も彫金師のあり方も、少しづつ変化をしてきました。

しかし、その技術は改善を重ね、受け継がれながらも、より私たちにとって身近なものになり、彫金師の作品は我々の生活を豊かなものにしてくれているように感じます。

1500年以上続く、伝統ある技術を身に纏える。そう考えるだけでもわくわくしませんか?

本記事を読んでいただき、今お持ちのアクセサリー・ジュエリーをより身近に、そして愛着を感じていただければ幸いです。

そして、これからの生活の中で、読者のみなさまにより素敵な出会いがありますことを、心より願っております。

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