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日本のものづくりデザイナー13~デザイナー・スズキ ユウリ(すずき ゆうり)~

音にこだわり、音をデザインする


スズキユウリ氏 参照:https://www.axismag.jp/posts/2019/09/145182.html

スズキユウリ氏は1980年東京都の生まれです。若い頃から音楽活動をしており、その「音」をデザインすることにチャレンジ。体験や音というものをインスタレーションからインタラクション、プロダクトと、さまざまなカタチにデザインしています。現在ではイギリスを拠点に活躍していて、日本人では初めて、世界的なデザイン事務所であるペンタグラムのパートナーにも就任しています。今回は、「音のアーティスト」とも言われるスズキユウリ氏をご紹介していきます。

音楽活動からデザイナーへの転身


スワロフスキー・デザイナーズ・オブ・ザ・フューチャー受賞作品 参照:https://www.axismag.jp/posts/2019/09/145182.html

スズキ氏の出身校は、小沢健二さんやコーネリアスなどを輩出し、音楽活動が盛んなことで知られる和光高校。そして、スズキ氏自身も音楽にのめり込み、音楽アートユニットである「明和電機」に憧れ、自分で楽器を作りながらコピーバンドをやっていたそうです。すると、その活動が明和電機の目に止まり、一緒に活動をすることになります。そして、明和電機との5年間に渡る活動の中で、ロンドンのアーティストたちとの交流があり、スズキ氏はロンドンに興味を持つようになっていきます。
ロンドンへの憧れを実現するため、スズキ氏は留学を決意。アート系の大学では世界最高峰とも言われるイギリスの国立大学であるロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に入学したのです。

不況下での活動が評価


構成部品を見せることで、電気の流れを感覚的に描写した作品 参照:https://www.eandy.com/collection/home_accessories/tube_map_radio/

RCAでプロダクトデザインを学んだスズキ氏ですが、卒業年は2008年。折しも世界的に不況の波が押し寄せ、同年9月にはリーマンショックも発生するという不運な年でした。そのため、決まっていた就職も白紙になってしまいます。
この苦境を乗り越えるために、スズキ氏はフリーでのアーティスト活動を開始、スウェーデンのデザイン事務所を手伝ったり、手作りの楽器を製品化したりするなどの活動をしていると、少しづつその作品は評価されていきます。2013年には自分でスタジオを設立し、母校であるRCAで教鞭をとることになります。そして、2016年、スワロフスキー・デザイナーズ・オブ・ザ・フューチャーを受賞。また、翌年は、ミラノサローネで自動車メーカーアウディの大規模なインスタレーションを手がけるなど、世界的に知名度が向上していきました。

音と人間の関係性を表現する


誰でも簡単に自分だけの電子楽器を作ることができる音楽発明キット「OTOTO」

2018年には、世界的なデザイン事務所であるペンタグラムのパートナーに就任したスズキ氏。ペンタグラムは、アメリカなどの大手弁護士事務所のようにパートナー制度を取っていて、言わばパートナー一人ひとりが、権限を持つ社長のようなものだといいます。そして、全世界でペンタグラムのパートナーは23人であり、スズキ氏は唯一の日本人です。そして、スズキ氏の手掛ける分野はペンタグラムの中でも異色であり、同時に大きな注目も集めています。

サウンドインスタレーションからDIYまで、音をデザインする


音で美を体験する – アコースティックパビリオン 参照:https://yurisuzuki.com/archive/news/acoustic-pavilion/

スズキ氏の作品は、ニューヨーク近代美術館など、世界中の美術館で展示されています。それは、サウンドインスタレーションであったり、DIYの手作り楽器であったり、さまざまなカタチをしています。しかし、そのどれもが、スズキ氏の言う 「音をつうじて社会的に関与すること」を表現しています。
スズキ氏の創作するもの、それは、音をデザインした結果です。そして、その作品はコミニュケーションの手法としての意義もあると言います。
「個人的には、失読症の問題があるので、美術館に行って、作品を理解するために、その作品の注釈や説明を読まないといけない場合だと、実のところ、僕にはすごく難しいんです。 なので、僕がやらなきゃいけないのは、説明が一切なくても適切に体験できるようにすることです。 コンセプトを自然にわかるようにする、っていうのが僕の求めているものです」

音とアートが融合したコミニュケーション


ランダムに様々な音による効果を与えてくれるサウンドマシン 参照:https://www.eandy.com/collection/home_accessories/the_ambient_machine/

スズキ氏は音楽とアートを組み合わせて、インスタレーション(空間的、総合的な演出)も構成しています。音楽は、ときに送る側と受け取る側の一方通行に成りがちなものですが、スズキ氏が目指すのは、双方向性のものであり、人と人との関係、コミニュケーションを促進するものなのです。
そして、スズキ氏の作品は、美術館にあるものだけではありません。もっと身近にある、私達も手にすることができるプロダクトデザインも手掛けています。もちろん、その作品の中にもスズキ氏のコンセプトは反映されており、音とアートの融合を楽しむことが出来ます。今後も世界的な活躍が期待されるスズキ氏。これからは、日本でもその作品を見ることが増えていくでしょう。

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