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日本のものづくりデザイナー15~デザイナー・秋山 亮太(あきやま りょうた)~

海外と日本の伝統工芸を融合させた作品づくり


秋山亮太氏 参照:https://www.axismag.jp/posts/2022/11/503300.html

秋山亮太氏は、1993年栃木県の生まれです。2017年に武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科を卒業すると、個人での活動の他にも「マルチスタンダード」というものづくり集団にも参加、国内外で展示会を開催しています。2022年の夏から、地元である栃木県益子町にアトリエを開設しました。領域を意識しないものづくりを実践している若手デザイナーとして現在多くの注目を集める人物です。

ものづくりを意識して育った幼少期


発泡スチロールと塗料で製作した「CRACK & SHRINK」 参照:https://www.axismag.jp/posts/2022/11/503300.html

秋山氏が生まれ育ったのは、現在アトリエを置く栃木県の益子町付近。益子焼や笠間焼などで知られる、言わずとしれた陶芸が盛んな土地柄です。そのため、小学生の時には同級生の親が陶芸関係の仕事をしている家も多く、秋山氏が遊びに行くと土いじりやろくろを触らせてもらうなど、ものづくりへの興味をそそる体験を多くしたといいます。
その記憶を常に意識しながら成長した秋山氏は、高校生の頃にはデザイナーという仕事を目指すようになり、美大への入学を希望します。そのなかでも、子供の頃から意識をしていた「工芸」というものも学べることから、武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科への入学を決めたのでした。
大学では、1年目にガラスや陶磁、木工などさまざまな素材に触れることで、手づくりの面白さを知ったといいます。そして、2年目では、ユニークなテーマを多く取り上げると学内でも評判だった、インテリアコースを選択。在学中にさまざまなコンテストなどに作品を出品するようになっていきました。

多様な素材を使った作品が注目を浴びる


「CRACK & SHRINK」のひとつ 参照:https://ryotaakiyama.com/project/cracks_and_shrinks/object/volca/

卒業後にまず、注目を浴びたのは、2019年のDESIGNART TOKYOに、DraadD(ドラアド)という3名のグループで作品を発表したときでした。秋山氏のアイデアで制作された作品「CRACK & SHRINK」は、いろいろな塗料を発泡スチロールに塗り、窯で焼くというもの。人為的な表現ではなく、窯の温度や塗料の量など偶発的な変化が醸し出す美しさが注目を集めたのです。
その後は武蔵野美術大学出身の5名で制作集団を結成。自由な発想の作品を国内外で発表して、知名度を高めていくことになります。

ものづくりに向き合うために益子町へ


木を薪割りの手法で割り、各背を合わせて接着して木の内部をあらわにしたスツール 参照:https://www.axismag.jp/posts/2022/11/503300.html

東京で活動していた秋山氏ですが、子供の頃にものづくりを初めて意識した益子町にあえてアトリエを開設しました。それは、ものづくりに向き合うため。「手を使ってものづくりができる環境が欲しかったから」とも話します。アトリエには大きな窯も設置して、作品づくりに没頭できる環境を整えています。

ビジネスも意識する活動


益子町のアトリエ内部 参照:https://www.axismag.jp/posts/2022/11/503300.html

アート作品、工芸、デザインなど多岐にわたる領域で活動する秋山氏。しかし、ほかの同じような活動をするクリエイターも含めて、経済的には厳しいのが現状です。特に日本国内では、あまり展開ができないなか、秋山氏は独自の考えでビジネス展開も考えています。
「日本では僕らのような領域を横断して活動する人の立ち位置は曖昧で、マーケット(市場)も小さい。そこで個人よりも、集団(グループ)で作品を展示発表することで、世間に強いインパクトを与えてアピールできるのではと考えました。それを見て興味をもってくれる人が増えて、マーケットが広がるきっかけにつながればと思っています」。まだ、大きな動きにはなっていませんが、若いクリエイターが経済的な土壌を意識しアクションを起こすことは、非常に有意義なことだと思います。

新しいものを生み出すことを目指して


BTF Shelf 参照:http://somewheretokyo.com/jpnc_ryotaakiyama_btfshelf_jp.html

今後の活動について秋山氏は次のように語っています。「1から10を生み出すのではなく、まったくの0から1をつくりたい」。領域を問わずに、表現ができることが秋山氏の強みです。ゼロという無限の発想から、今後どのようなものが生み出されていいくのか、多くの注目が集まります。そして、さらには工業デザインや家具、空間デザインなど、さらに多くの興味ものぞかせる秋山氏。2022年はベルリンや上海など海外での展示もおこなわれています。今後大いなる飛躍が期待される若手デザイナーの一人と言えるでしょう。

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