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日本のものづくりデザイナー22~帽子職人・水沼 輝之(みずぬま てるゆき)~

世界で唯一の帽子を生み出す職人


水沼輝之氏 参照:https://organcraft.com/journal/teruyuki-mizunuma-1

水沼輝之氏は1978年、栃木県の生まれです。工業高校を卒業して、一度は建築関係の会社に就職しますが、ものづくりへの憧れから帽子職人となった経歴を持ちます。現在は自らのブランドを持ち、帽子の木型から製作して独自の技法により唯一無二の個性的な帽子を生産、そのデザイン性と品質に大きな注目が集まっています。今回は、日本でも稀有な存在である木型から製作をおこなう帽子職人、水沼輝之氏をご紹介します。

ものづくりに憧れて専門学校からリスタート


個性的なフォルムの作品 参照:https://organcraft.com/journal/teruyuki-mizunuma-1

小さい頃からものづくりが好きだった水沼氏。社会人となっても、自分の中にあるものづくりへの意欲は衰えずに、逆に強くなっていったといいます。その強い思いに突き動かされるように、2001年、水沼氏は安定した職業から離れ帽子業界に入る決意をしました。
門を叩いたのは「サロンド・シャポー」という学校。1951年に設立された、日本初の帽子製作技術を教える教育機関です。学校に入って基礎を学ぶうちにわかったことは、帽子の種類は大きく分類して2種類だということ。一つはキャップなどの布物、そして、もう一つは木型を使って作る型物でした。しかし、少し変わったものを作ろうにも、学校には丸や四角といったオーソドックスな木型しかありません。そこで水沼氏が考えついたことが、新しい視点で型物の帽子を作ること、木型から自分で製作してゼロから帽子を作ることでした。

世界に認められる帽子職人になりたい


水沼氏の独自手法によりバラの模様を浮き立たせています 参照:https://www.mizunumahat.com/product/rose-capeline-/22?cp=true&sa=false&sbp=false&q=false&category_id=3

学校を卒業した後水沼氏は、型物中心の製造工場で15年近く勤務。ハイブランドからカジュアルブランドまで様々な帽子作り続けます。ただ、そこでも木型はそれほど多く用意されているわけではなく、自分が目指すゼロから帽子を作る事はできませんでした。
また、工場で製作している帽子が、ブランドの名前だけで価格差が出ることに対しても、懐疑的な考えを抱いたといいます。「適正価格ってなんだろうって。手間暇かけて作ったものが値段がつくのはわかるんですけど、実際に現場で作ってるとこれをこの値段で売るの?みたいなことが結構あったんです。だから独立して最初から最後売るところまで一貫して自分が担当するブランドを作ってみたくなったんです」と語るように、独立への決心がついた水沼氏は2015年に自らのブランド「WABISABISM」を立ち上げます。専門学校時代に目指したゼロから帽子をつくることで、「世界に認められる帽子職人になりたい」。それが、独立への大きなモチベーションになったそうです。

顧客とのコミニュケーションを大切にする


緻密な模様が浮き出す美しい作品。肌に優しいコットン100%素材を使用 参照:https://www.mizunumahat.com/product/rose-capeline-/22?cp=true&sa=false&sbp=false&q=false&category_id=3

帽子の製作は木型を製作する職人と、帽子自体を作る職人が別々なのが普通だといいます。特に日本では木型職人が非常に少なく、決まった木型で帽子を作ることが多いのだそう。現在の水沼氏のように、木型の製作・デザイン・帽子の製作までおこなう職人は国内であまりいません。水沼氏は、敢えてそれに挑戦をして、唯一無二の帽子を製作する職人となります。

試行錯誤の上で生み出した独自の手法


天然草の帽体を二重構造にしたコンテンポラリーなオリジナルハット 参照:https://www.mizunumahat.com/product/rose-capeline-/22?cp=true&sa=false&sbp=false&q=false&category_id=3

独立を果たし、自分のブランドを持った水沼氏ですが、すべてが上手くいったわけではありません。修行時代も含めて、どうすれば自分の思う帽子を製作できるか、苦しい試行錯誤の繰り返しだったといいます。
ただ、その努力は、現在水沼氏にしかつくれない、個性的な質感とフォルムの作品を生み出し、多くの人々を魅了しています。従来のハットのイメージからは想像ができないようなデザインは、全国の一流百貨店で顧客を掴み、「もう帽子はWABISABISMのものしかかぶれない」との声も聞かれるほどのブランドに成長したのです。

すべての帽子を一人でつくり、顧客との交流を大切にする


どこから見てもアシンメトリーで、ちょっと変わった特別な帽子 参照:https://www.mizunumahat.com/product/free-step-hat-/31?cp=true&sa=false&sbp=false&q=false&category_id=2

現在では、多くのオーダーメード依頼もあるという水沼氏のブランド「WABISABISM」。どれだけ多くのオーダーがあっても、一貫して守り抜いてきたことがあるといいます。それは、「すべての帽子を自分一人の手で作り続けること」。帽子職人としての矜持とも言えるこの考え方は、自分の仕事に責任を持つと同時に、顧客との絆のようなものも作り上げる手段なのかもしれません。
それを確信させるように、水沼氏は顧客との交流を非常に大切にしています。売り場に直接立つことはもちろん、オンラインショップでは自らWEBマガジンを執筆して、メンテナンスや帽子の知識などを公開しています。
「汚れたらどうしたらいいですか、とか型崩れしたらどうしたらいいですか、など買った後にもお手入れをして安心して長く使っていってほしいので出来るだけ買ってくれた方とコミュニケーションを取るまでやって初めて自分のクラフトマンシップというものが見えてくるのかなと思っています」と語る水沼氏。これからも独創的な帽子を製作するため、日々、技術を磨いています。

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