人が豊かになれるデザインを目指す
大城健作氏 参照:https://italianity.jp/culture/art-design/ooshiro_interior_design
大城健作氏は1997年沖縄県の生まれです。世界的なデザイナーを多く輩出しているイタリアミラノのデザイン専門学校、Scuola Politecnica di Design(スクオラ・ポリテクニカ・ディ・デザイン)を1999年に卒業。その後もヨーロッパを中心に経験を積み、現在ではミラノを拠点に多くの世界トップブランドとのプロジェクトなどに携わっています。今回は、経済性や効率性を重視する日本において、海外在住のデザイナーとして「人が豊かになれるデザインを目指す」大城健作氏をご紹介します。
イタリアのデザインに憧れた少年時代
構造的な要素を一切排除することを可能にした、シンプルでクリーンなシェルフ「Muk(ムク)」
大城氏は生後まもなく大阪に転居し、高校卒業までを過ごします。その大阪の地で少年時代に影響を受けたのが、幼なじみの父親でした。建築デザイン事務所を経営していたその人は、仕事が終わると自分の子供と遊びに来ている大城氏に対してデザインのことなど、いろいろな話しをしてくれたそうです。特にイタリアのデザインが好きだったそうで、大城氏はその話を聞くうちにどんどんと、イタリアの魅了されていきました。
そして、その頃からイタリアでデザインを学ぶと決めていた大城氏は、高校を卒業後にミラノにある名門デザイン学校「Scuola Politecnica di Design(スクオラ・ポリテクニカ・ディ・デザイン)」へと留学するのです。
ヨーロッパを拠点に著名デザイナーのもとで経験を積む
無機質なシェルと有機的なシートの組み合わせが、どこか未来的な「Spica(スピカ)」
在学中には町工場などを回り、実際の作業を見学するなど独自の方法でミラノのものづくりを肌で感じた大城氏。卒業後にはピエロ・リッソ-ニやロンドンのバーバー&オズガビーなどの世界的にも有名なデザイナーのもとで経験を積みます。そして、2015年にはミラノで自らの事務所を立ち上げ独立。少年の頃に誓った夢を実現したのです。
独立後はインテリアやプロダクトを多く手掛け、ヨーロッパでは多くのデザイン賞も受賞しています。日本でもサスティナブルな素材が注目される中、循環型素材であり、軽量で強度のある「アルミハニカムパネル」を使用して、ソファ「Spica(スピカ)」とシェルフ「Muk(ムク)」を発表。注目を集めています。
デザインは自然から発想を得る
与論島に建設予定の施設
現在もミラノを中心に活動している大城氏。休日にはアルプスや田舎町を訪れてリフレッシュをしているそうです。ミラノという都会から自然を楽しめる地方に出向くと、仕事のことも頭から離れリセットができるため、新しいデザインのアイデアも湧いてくると言います。そして、そのアイデアをもとに大城氏は自然をテーマにしたプロジェクトを日本の与論島でも展開しています。
自然と共存する施設を
大城氏がデザインした椅子「BAIA」
大城氏が参加するプロジェクトは、海洋環境とともに生きることをテーマにしたもの。海の環境を守りながら、海洋教育やマリンアクティビティをおこなえる施設を建設しています。
「海洋環境のために効果的なアクションを起こそうと思ったら、研究者や技術者や、企業など、さまざまな業界の人たちが手を携えて取り組まないと実現できない。いちばん大事なのは、そういった異業種を繋ぐプラットフォームの構築だと思います」と、環境問題にも大きな関心を寄せる大城氏。アイデアの源であり、リラックスできる場所でもある自然環境を、しっかりと次世代にまで残したいとも語っています。
良いデザインを生むには生活を楽しむこと
線香花火から発想を得たという照明器具「SPARKLER」
「僕はただデザインしているのではなく、自然も大好きで、普段の生活を楽しんだり、十分な休暇をとって色んなことを体験しながら、その生活サイクルの一部としてデザインをしています」と語る大城氏。良いデザインは生活を楽しまなければ生まれないとも言います。そして、そのデザインは使う人が豊かな生活を送るために役立ちます。
この好循環を生み出すために、大城氏は「これからも仕事はずっと楽しんでいきたいですね、目標というよりも、そういう状態をずっとキープしていきたいですし、そんな生き方を楽しみながら、仲間たちと常に新しくワクワクするようなものづくりに挑戦してきたいと思います」と話すように、これからも毎日新鮮な気持ちでデザインという仕事に取り組んでいくことでしょう。