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日本のものづくりデザイナー53~漆芸家 佐野 圭亮(さの けいすけ)

既成概念にとらわれない伝統工芸を目指す


佐野 圭亮氏 参照:https://kuma-foundation.org/student/keisuke-sano/

佐野圭亮氏は1994年群馬県高崎市生まれです。東京藝術大学・大学院で漆芸を学び、在学中から独創的な作品を製作し注目を浴びてきました。伝統を踏まえながらも、新たな創造を表現するその作品は東京芸術大学安宅賞、第54回神奈川県美術展工芸部門大賞、伊丹国際クラフト展励賞(老松賞)、AAC2018(Art meets architecture competition) 優秀賞など、多くの評価を得ています。

ものづくりに憧れて漆芸家に


2参照:https://kuma-foundation.org/news/7655/

「とにかく、ものづくりがしたかった」という佐野氏。一時は先端テクノロジーに憧れて、ロケットエンジンをつくる仕事をしてみたいと思っていたそうです。
しかし、工芸というものに出会ってからは、大きく考え方が変わったと言います。「工芸というものが非常に先進的なものだと感じたからです。矛盾した話に聞こえるかもしれませんが、工芸の技術は江戸時代から変わらないものです。現代のテクノロジーが常に進歩を続け、ある意味、完成されていないのに対し、工芸の技術は遥か昔にすでに完成され、それゆえ変わりません」と、語るように、工芸の完成された技術に魅了されたのです。

美的感覚を更新する


「揺れ動く知性」参照:https://kuma-foundation.org/news/7655/

工芸の中でも、日本独自の技術で完成された漆芸に魅力を感じた佐野氏は、東京藝術大学で漆芸を学びます。そのなかで、感じたことが「美的感覚の更新」でした。
「谷崎潤一郎が『陰翳礼賛』で語ったように暗い室内でろうそくの火のもとで眺めてこそ漆の美しさが表れるものだと思っていました。たしかにそうした美しさはあるのですが、昔の美的感覚が更新されずに現在まで引き継がれているように思うんです」と語る佐野氏。漆芸を深く学ぶにつれて、既存の美しさを更新して自分の作品により「新たな美しさや新たな価値を創り出していきたい」と思うようになっていきました。

伝統的な技術を使用した新たなる創造


「揺らぎに咲く」参照:https://keisukesano.com/ArtGallery/work/#01

大学院卒業後、漆芸家として活躍する佐野氏。大学院以降からは立体造形に重点を置いて、写実的な作品なども手掛けています。その活動を通して、「伝統的な技術を使用し漆の良さを最大限引き出しながら、作品をつくる」という、作家としてのテーマが見えて来たと言います。

偉大なものから抜け出す精神を


「宙の玄室」参照:https://kuma-foundation.org/news/7655/

佐野氏が作品づくりで心がけているのは、「まず見たことのないような美しさを感じてもらい、後から日本の漆芸の延長線上にあるものだとわかる」ということだと言います。
それは、最初から漆だということがわかってしまうと、日本の伝統文化の美しさだと限定的に捉えられてしまわれないようにするため。「伝統というものは、結果として残っていくものだと考えています。その時代その時代に生きた作家たちが残した痕跡が積み重なって伝統ができていくのであって、その伝統を更新する権利を持つのは、今の時代を生きる漆芸家たちだと思っています」と、自ら新たな伝統を作り上げるという抱負を語ります。

作品は漆の美しさを表現するためにある


「変幻」参照:https://kuma-foundation.org/news/7655/

佐野氏の作品には、アクセサリーや小箱、立体造形などさまざまなものがあります。それぞれに違う方向性をつくっているように見られることがありますが、実は佐野氏の中では、すべての方向性はつながっているといいます。
「漆の美しさに軸足を置いたとき、その造形はひとつに限定されるものではないと考えています。逆に言うと、素材の美しさに導かれて、さまざまな形のものを作らされているようにも感じています」と語る佐野氏。漆に魅了された若き漆芸家は、今後も伝統を更新する作品をつくり続けていくことでしょう。

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