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江戸和竿(わさお/わかん)-美しさに秘められた伝統工芸品の実用性-

美しいだけでない「和竿(わさお/わかん)」

父が還暦を迎えました。

一般的には赤いちゃんちゃんこをプレゼントするところですが、何か特別なものをプレゼントしたい。

センスの見せどころ!腕が鳴ってしまいます!
鼻でスンスンと息をしながらリサーチしている最中に出会ってしまいました。

 

「和竿」

(以下、画像引用元:江戸和竿 | 動画で見るニッポンみちしる | NHKアーカイブス)

素材は竹。これらを加工し、つなぎ合わせて1本の釣り竿となる。
表面に塗られたうるしは艶やかな光沢を放つ。

なんと美しい。機械では絶対に出せない逸品。
匠ハンターである私としては、瞬時に職人が成す業であると確信しました。
しかも、工芸品のオブジェとしてあるのではなく、実際にハゼ釣りの大会で和竿は積極的に使用されているのです。ハゼだけでなく様々な魚種に対応する竿があります。

しかし、美しさだけでなく、和竿は高い実用性を兼ねている。

父は釣りが好きで、今でも近くの川で1人ハゼ釣りをしに行く。

私も幼い頃に父に釣りの仕方を教えてもらいました。
エサはイソメ。ミミズのようなムカデのような生き物
初めて指を噛まれた時はゾッとしたのを良く覚えている。

「先に頭切らないから、そうなるんだ。頭はどっちか分かるか?」
「お前だって上からいきなり物が落ちてきたら逃げるだろ?優しくだ。」
「ハゼはひきこもりだと思え、飯を部屋の前に置いておいてあげりゃ食う」
「ハゼの部屋はどこか予想してみろ。ハゼの部屋は大体1階だ。」

自分1人で釣れた魚は、なぜあんなに嬉しいのか。
父の言葉は独特であったけれど、一緒に考える形で教えてくれました。
大人になっても、遊びで釣りをするようになったのは父の影響。

そうだ。和竿を2本買って、一緒に釣りに行くなんてどうだろう。
そう思うと、この艶やかな茶色を還暦にかまかけて「赤」と表現することも粋に感じてきた。

これに決めた。

そして、匠ハンターとしての興味は買うだけでは収まらない。
この和竿がどんなもので、どのように作られて、どのような気持ちが込められているのか。自分の使うものに歴史と信念があるならば、そこまで知らなければ気が済まないのです。

匠ハンターとしての宿命と言うべきか。

日本の職人が作り出す伝統工芸品「和竿」は高性能を兼ね揃える。
この記事では、和竿職人の技術をはじめ、和竿がどのようにして作られる過程を出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。

 

 

和竿とはなにか

和竿(わさお/わかん)の定義

和竿という名前が付けられた歴史は明治時代と意外と最近であることが分かった。
明治時代に西洋から「竹を縦に裂いて再接着して製造する洋竿(ようさお)」が紹介され、日本の竿は全般的に「和竿(わさお)」と区別されるようになります。
広義では日本で作られる竹竿全般を「和竿」と言いますが、私がターゲットにする和竿は「複数の竹を継ぎ合わせて一本の釣り竿にする継竿」を指します。

江戸和竿、横浜竿、川口竿(埼玉)、郡上竿(岐阜)、紀州竿など、各地域でその作られ方や歴史は違いますが、今回は江戸竿に焦点を合わせて紹介していきたいと思います。

江戸和竿(えどわざお)のルーツ

和竿の発祥に関しては詳しく分かっていない部分が多いですが、「継竿」の発祥は京都と言われており、江戸における継竿の発祥は、江戸時代の享保(1718~35年)と言われています。
その技術の発展は、天明8(1788)年に現在の台東区下谷稲荷町の広徳寺前で創業した「泰地屋東作(たいちやとうさく)」が多大な影響を与えたと言われています。これには、現代の江戸和竿職人の系譜をさかのぼった時、多くの職人のルーツが泰地屋東作に行き着くことに裏付けられているようです。

和竿の原材料

江戸和竿の原材料は竹ですが、
・布袋竹(ほていちく)
・矢竹(やだけ)
・淡竹(はちく)
・真竹(まだけ)
と、複数の異なる種類の竹をつなぎ合わせて1本の継竿を作ります。

 

 

和竿の魅力

現代の主流は、カーボンロッドの釣り竿。
合成金属で軽くしなりもあり耐久性も強い。

かたや、和竿は竹を継ぎ合わせた細い棒にしか見えない。

はじめて和竿を見た時、「これで本当に釣れるの?」と、釣りの上級者であればあるほど思うそうです。

しかし、天然の竹は弾力性に優れていると同時に鋭い反発力を持っています。
竹という自然が生み出すしなやかさによって、竿が曲がっても魚に違和感を与えない。

製作工程については後述しますが、職人は竹を選別する目と様々な工程をその経験と手の技術で1本の釣り竿を作り出す。

所詮は昔の技術。今の釣り道具に勝る訳がない。
もしくは、玄人向けの釣りの技術を求められるのでは?

そう感じる方もいらっしゃるかもしれませんが驚くことにその逆なのです。

海、川、渓流などの釣り場に合わせた和竿は
対象となる魚、釣り方に応じて作られる。

シチュエーションとターゲットに合わせた釣り竿選びで。
まさに「漁獲」をするための高い実用性を持ち合わせ、今や和竿はルアー竿などの仕掛けの多様性にも対応したものを作る職人さんもいます。

そして、何より和竿一番の特徴は「魚信」。
エサに魚が食いつく時の感触が手元にしっかり届いてくる。

「水の中の魚がどうしてるのか。自分の釣り竿が水の中でどうなってるか。」
「想像するんだよ。それが当ってたらすぐ釣れるぞ。」
父に教えてもらった釣りの極意の1つ。
和竿は漁獲の極意が、技術として盛り込まれた逸品なのです。

その上で、見た目の美しさは抜群。
また魚信を突き詰めると、水の流れ方まで伝わってきます。
釣果が上がるだけでなく、その後にカーボンロッドでの魚信もよく感じられるようになったのです。自身の釣りの感覚を間違いなく上げてくれるきっかけになったと確信しました。

ゴルフやスノボやフットサル。
形から入る人は多くいますが、釣りで形から入るなら間違いなく「和竿」をオススメしたいですね。

継ぎ口を外してコンパクトに収納して釣りに向かう姿は、むしろ令和の最新スタイルになるかもしれません。笑
漁獲の心得まで1つの竿に落とし込む職人の伝統技術。
実用性の高い美しい和竿で釣りデビューするのも面白いと思います。

 

和竿職人の驚きの製造技術

(引用:YouTube 青山スクエアチャンネル)

和竿はどのようにして作られているのでしょうか。

和竿について調べていると1本の動画に行き当たりました。
製造工程と作る上での意識のことが5分でまとめられており、非常に見やすい動画になっています。

動画の内容を引用しながら、動画では省かれている部分を補足しながら製造工程をまとめました。

晒し

「和竿に適する竹を作る」
原料に使用される竹は10種類以上。150本の竹があっても10本しか残らないことも。油抜きをして約1カ月以上に渡り天日で燃焼させたのち、更に屋内にて2~3年に渡り自然乾燥させて材料の準備が完了します。和竿になれる良竹、強靭な竹を選別するまでがこの工程にあたります。

 

切り組み

「釣る魚に合わせて10種類の竹の種類を使い分けて、狙いの寸法に合わせて切る」

驚愕の工程です。
なぜならば、ザっと調べただけでも、

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川(たなご竿、真鯛竿、手長えび竿、鯉竿)
中流域(はや竿、やまべ竿)
渓流(ヤマメ竿・岩魚竿)
ボート(ハゼ竿・胴突き竿)
船竿(かわはぎ竿・きす竿・ひらめ竿・しゃくり竿..20種以上)
磯竿(石鯛竿・めじな竿)
ヘラブナ竿(竿掛け、玉の柄、浮き入れ)
へち竿
わかさぎ竿
鮎竿
テンカラ竿
ルアー竿
フライ竿
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これだけのシチュエーションと魚種によって、その選別を組みわけている。
しかも、その工程はただ長さを合わすだけではなく、そのしなりや反発力を計算して上等な1本の竿を作り上げる。和竿職人のスキルの高さが、ひしひしと伝わってきます。

 

火入れ

「自然の竹の強さを高める。竹を真っ直ぐに矯正する」
炭火で竹を炙り、矯め木(ためぎ)で竹を真っ直ぐにする。
火を入れて冷ますの工程をすることで、竹が持つ本当の強さを引き出す作業です。
この作業にも火加減を竹の状態に合わせて行う技術が必要となります。

巻き下(糸巻き)

「継ぎ口の強度を上げる」
糸巻きは継ぎ口に糸を敷き詰めるように巻いて、その上から漆で何度も塗り足す工程です。上記URLの動画を見ていただくと分かりやすいですが、非常に繊細なテクニックを要した工程であることが分かります。

継ぎ

「継ぎ口同士を調整して、1本の竿にする。」
自然素材は削ることが出来ても、元に戻すことや増やすことは出来ません。
ガタつきが出ないように細心の注意を払って、少しずつ削っていく。
和竿の基礎が完成する大切な工程。ぴったりと吸い付くように継ぐように調整することが求められます。内部の様子は目では認識できないので、ここでも職人の手の感覚と経験がものをいいます。

塗り下(漆塗り)

「竿のパーツ付けをする」
竿全体を漆で塗り上げる前に、竿尻の穴に栓を入れる栓かいや、穂先の先端への蛇口(へびぐち)付けなどの細かい作業を行います。

動画では省かれていますが、この上で、火入れをし直し、漆を竿全体に塗り、最後は「漆を手に付けて回しながら満遍なく馴らす作業」を行います。

1本の材料を作るのに2、3年かかり、その上でち密な作業をしてようやく出来る1本。これは熱意のある高尚な職人魂を持った人にしかできない芸当ですね。

和竿職人は美しい

上記URLの動画の最後の言葉を引用したいと思います。

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まぁ、実用性を考えた丈夫さと世界に1本だけの作品を作るのが江戸和竿の特徴だと思います。

長い時間の間には、
釣り方が変わったり、
魚の大きさが変わったり、
そういうことが海でも良くおきています。

それを知って、同じように釣り人が持っている情報を
自分が知らなくては竿は作れません。

そのために、自分も時間があれば「大好きな釣り」に行きたいのです。

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なんでしょうか。
職人でありながら童心を感じるこの言葉の力。
それは和竿と向き合う職人の純粋なる目的が詰まっていました。

この芸術作品を作るために、自身も「大好きな釣り」をしたい。

美しい価値あるものを作る人はその心も清らか。

胸が温かくなる言葉でした。

 

あなたも和竿を使ってみませんか?

美しき和竿の世界はいかがだったでしょうか?
私の和竿との出会いは非常に感動的で、匠ハンターの皆さんに伝えなくてはならない重要な出来事の1つになりました。

眼で見る経験、手の感触、完成までの想像力。
丁寧さや情報を作品に還元する技術の高さ。

和竿職人になれるのは100人に1人いるかいないかと言われています。

私は、この美しく価値ある伝統工芸が、この日本にいつまでも続いてくれることを願っています。

 

父の還暦祝いに、赤いちゃんちゃんこと父が好きな麦焼酎に和竿をプレゼントしました。

「久しぶりにハゼを一緒に釣りに行こう」と言うと、父は「ちっとは頭使えるようになったのか?」と嬉しそうに毒づいてきました。

 

釣りを愛する人は、人を愛する表現を知っているように思う。

自分もそういう人間になれたらいいなと思える出来事でした。

和竿はカーボンロッドなどに比べれば高価ですが、決して高級品すぎる金額ではありません。これだけの時間をかけて…と思えば、余計に値段は手ごろで安価です。

魚を手元で感じられる感動を大切な誰かと共有してみませんか?
この記事が、少しでも多くの人に届きますように。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後の記事の参考にさせていただきたいので、よろしければコメントをお願い出来ればと思います。

もし、和竿を持っている方がいたら、「あなたの逸品」への投稿や逸

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