箱根細工とは?
出典:本間寄木美術館
https://www.yoseki-museum.com/about/yosegizaiku-qu/
箱根細工は江戸時代末期に箱根畑宿の石川仁兵衛 (いしかわ・にへい) が生み出し、昭和59年に国の伝統工芸品として認定されました。その起源は平安時代初期から始まったとも言われ、歴史ある工芸品です。江戸時代に温泉地や街道の茶屋でも売られるようになり、だんだんと広まっていきました。
箱根・小田原地方では豊富な木材を使って、ろくろを使ってお椀などを作る挽物細工(ひきものざいく)と、板を組み合わせて箱や箪笥を作る指物細工(さしものざいく)を「箱根細工」として生み出してきました。
戦国時代から作られていた挽物細工が特に盛んでしたが、江戸時代後期、畑宿に住んでいた石川仁兵衛が、静岡で生まれた寄木細工の技術を応用し「箱根寄木細工」を考案したことによって、指物細工も増えていくようになります。こうして、「寄木細工」をもとにした「箱根細工」が主に箱根・小田原地方で栄えていきます。
沢山の種類の木材を用いて、材色や木目などの特徴を活かし緻密な幾何学模様を作るのが寄木細工です。そのうちの一つが、今回取り上げる「箱根細工」。海外ではこのような寄木細工はあまり作られていない為、日本独自の文化と言えるでしょう。海外の方からの高い評価も得ており、現在の日本では箱根・小田原地方でのみ生産されています。
箱根では様々な種類の木材が手に入る為箱根で作られることが多くなりました。今では箱根を代表する品物ですよね。お土産などにもよく選ばれるかと思います。そんな箱根細工の魅力をお伝えしていきます。
伝統工芸品、箱根細工の特徴
出典:本間寄木美術館
https://www.yoseki-museum.com/about/yosegizaiku-qu/
そもそも伝統工芸品とは、どのようなものを指すのでしょうか。
「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」によれば、
・日常生活の用に供されるものであること。
・製造過程の主要部分が手工業であること。
・伝統的な技術や技法によって製造されるものであること。
・伝統的に使用されてきた原材料が主な原材料として用いられ製造されるものであること。
と定められています。この事からも、箱根細工、寄木細工が日本の伝統的なものであり、多くの人に親しまれてきた事が分かりますね。
寄木細工は主に手作業で作られており、職人の技によって出来ています。どのような木材を使い、どのような模様を作るのか。それは作り手によって大きく変わってきます。こだわり抜かれた工芸品はどこから見ても美しく、完成されたものと言えるでしょう。この技法は古くから伝わり現在でも引き継がれ、日本を代表する工芸品となりました。
箱根寄木細工は一定の厚みを持った「種板(たねいた)」を大鉋(おおかんな)で薄く削ったものを装飾に使ったり、そのまま加工して製品にしています。薄く削った模様を木製品の外側に貼り付ける手法を「ヅク貼り」、種板を加工して形づくる手法を「ムク作り」と言います。
箱根寄木細工と一口に言っても、色んな種類があるのです。箱根細工は細工を仕掛けた小箱やストラップなど、多種多様なものに使用され、その可能性は無限にあります。
箱根町では、畑宿と箱根湯本に工房があります。合わせて6工房あり、そこで箱根細工は作られています。
箱根細工の模様は全て木材のそのままの色で作られており、染めたり、書いたりは一切しないのが特徴です。材料として沢山の木材が使用されていて、それらは色ごとに種類が別けられます。一つ一つの色や木目によって模様を作り出す箱根細工は、もはや美術品とも言えるでしょう。実際に寄木細工をメインに置いた美術館もあり、その芸術的価値は広く認められています。
箱根細工の歴史
前述した通り、箱根細工は江戸時代末期に生み出されました。
箱根南部の立場(たてば)と呼ばれた、旅人の休憩所であった茶屋で土産物として人気だった箱根細工。シーボルトの『江戸参府記』や安藤広重の浮世絵『箱根屋 外茶番屋膝栗毛』にも描かれ、国内、海外問わず沢山の人を魅了していたことが分かります。
その後、畑宿で脇本陣だった「つた屋」の金指松之助なども加わり、箱根細工は畑宿で発展してゆきました。
鎖国が終わり下田が開港されてから、畑宿の「茗荷屋」が海軍へ売り込み、箱根細工は定番の土産物になります。これは今日でも続いていますね。
現代における箱根細工
箱根細工は伝統工芸品ではありますが、現代の日常にもうまく溶け込んでいます。沢山のアイテムが作られ、老若男女問わず人気を博しているのです。
元は箱根地方で生産される木材を使って作られていましたが、現在では箱根山は国の保護区に指定され、木材を使用することが出来なくなりました。そのため最近作られている箱根細工は海外産の木材を使っているのが一般的です。
箱根細工は箱根駅伝のトロフィーなどにも使われており、今でも箱根を代表するものであることが分かります。
出典:旅ぐるたび
https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_470/
最近でも土産物として人気なのが「秘密箱」。一定の手順を踏まないと開けることが出来ない箱です。これは現代の箱根細工の代表作でもあります。これは外国人観光客にも人気を博しています。日常のワンシーンを彩ってくれるものとして、一つは欲しくなりますよね。筆者も、箱根細工の秘密箱を所持していますが、可愛らしく綺麗な見た目だけでなく、ちょっとした小物や鍵などを入れておくのにも使える便利グッズでもあります。
現代の寄木細工を語る上で欠かせない工房のひとつに「OTA MOKKO(太田木工)」があります。小田原市にあるこの工房は2012年に設立され、2015年に現在の地に移転しました。ここでは沢山の寄木細工作品が作られており、個性豊かな雑貨が並べられています。皿や箱など、日常生活でも使えるものが沢山あり、まさに現代社会の日常に寄り添った寄木細工です。工房があるのは元々製麺所だった場所で、当時の面影は残しつつも木工製作所として今も使われています。そばには日本最古の生活用水路といわれる板橋用水が流れており、とても風情ある地です。
寄木細工の若手職人集団「雑木囃子(ぞうきばやし)」という方々もおり、現在は6名の若手職人さんたちが属しています。彼らは年に1回は必ず新作発表をする展示会を開催しています。彼らのような若い職人さんの活動もあり、若年層への寄木細工の関心も高まっているようです。
新しい寄木細工
出典:旅ぐるたび
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最近ではブローチやネクタイピンなど、更に生活に寄り添った作品も多く作られています。シンプルかつ個性のある作品が作れる為、自分で制作出来る工房もいくつか存在します。また、個人で制作した作品をサイトやフリーマーケットで販売するなど、若い層でも敷居の低いような場が数多くあります。そういった機会や先述した若手の職人さんたちの働きによって、今でも寄木作品は多数生み出されています。名入れ加工をしている所もあるので記念品やプレゼントにも喜ばれる為、需要は高まりつつあるようです。スマートフォンケースなどの「現代ならでは」の作品もあり、若者からの人気もあるのが伝わってきますね。
そして、昨今では寄木の模様をプリントした製品などもあり、寄木、箱根細工の多様化も感じられます。昔よりも更に親しみやすくなったのでしょう。
出典:家庭画報.com
https://www.kateigaho.com/home/75673/
寄木細工の家具などもあり、代表的なものには箪笥などがあります。大きさも多種多様で、大きいものから小さなものまで作られています。見た目もモダンな上に実用性も高いので人気なようです。
今のご時世外出自粛などが多いですが、そんなコロナ禍でも楽しめるのがオンラインでの寄木細工講座です。本間寄木美術館では、オンライン寄木細工講座を行っており、様々な柄の中から好きなものを選び、自宅で寄木細工を楽しむことが出来ます。時代のニーズに合わせた形で伝統工芸を楽しめるのは嬉しいですよね。もはや伝統工芸は敷居の高い昔ながらのものだけでなく、一般的に誰もが楽しめるものになっています。また、人気漫画の影響で日本伝統の柄やモチーフに興味を持つ方も今は多いようです。
出典:箱根丸山物産
https://www.hakonemaruyama.co.jp/html/page57.html
人気漫画にも出てくる「麻の葉模様」や「市松模様」は寄木細工にも多く使われています。これは昔から日本にある伝統的な模様で、見た目からも男女問わず人気があります。今や子供にも喜ばれるものになっているのではないでしょうか?
出典:星野リゾートみちくさガイド
https://www.hoshinoresorts.com/guide/area/kanto/kanagawa/hakone/hakone-omiyage/
そして箱根にある「浜松屋」では、秘密箱の他にも「ズク貼り」の茶筒なども販売しており、人気のお土産屋になっています。色や柄などに個性があり、フクロウな柄などの可愛らしいデザインも数多く取り扱っています。フクロウは縁起物としても知られているので、お土産としてプレゼントしたら喜ばれること間違いなしでしょう。そしてこの浜松屋では実際に箱根細工を作っている所を見学することも出来ます。伝統工芸師の技を見ながら説明なども受けることが出来るので、箱根細工の技法を細かく知れます。より一層、寄木細工、箱根細工を身近に感じることが出来るでしょう。
このように箱根や小田原では多くの店舗や美術館が寄木細工、箱根細工を取り扱っており、その魅力を沢山の人にお届けしています。古くから伝わる日本の伝統文化を現代風にアレンジしたり、昔ながらの作品を提供したりなど、様々な形で寄木細工に触れることが出来ます。匠の技の光る伝統工芸品に触れ、日本の文化を深く知る機会にもなります。日本人にも海外からの方にもおすすめしたい「寄木細工」。今一度日本の伝統文化に触れてみませんか?
出典:
https://www.hoshinoresorts.com
https://www.hakonemaruyama.co.jp
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