日本一の匠と逸品を知りたいみんなのためのコミュニティサイト 匠ウォンテッド

職人は、鞄と向き合い続けてブランドを作った ~手作り鞄の技術に見る職人の想い~

ブランド品。

それは本来であれば気品を感じさせる表現だが、日本では必ずしも製品が評価されていることを示す言葉ではない。

ブランド品とは簡単に言えば高級品であり、高級品とは高いお金を支払って購入する品物のことを指す。

しかし、本来の意味で用いるのなら、そこに「持ち主の品格」という意味が込められていなければならない。

高級品が「なぜ」高級品として評価されるのか。

その理由は「半永久的に」・「自分のもの」として使えるからだ。

そのためには、自分自身がモノを大切に使う習慣を身に付けていなければならない。

とはいえ、モノを長く使い続けるためには、作り手側にも一定の責任が問われる。

を例にとって考えてみよう。

耐久性がなければ、壊れてしまう。

味わいがなければ、飽きてしまう。

機能美がなければ、使う場所が限られる。

親近感がなければ、きっと誰かに売ってしまう。

時を超えて使われるためには、ざっと挙げただけでもこれだけのハードルを超えなければならないのだ。

そこで生まれる、一つの疑問。

「なぜ、ブランド品は長きにわたり愛されるのか」

一言でまとめてしまえば「その価値があるから」なのだが、それだけでは具体性に欠ける。

そこで、国内・海外で人気のブランドが持つ技術を紹介しながら、理由を紐解いていこうと思う。

ルイ・ヴィトン(トランク)

世界的な革製品ブランドとして名高いルイ・ヴィトン。

そのルーツは「トランク」にある。

ルイ・ヴィトンのトランクは、その堅牢な造りから水を通さず、かのタイタニック号の事故においてもトランクが沈まなかったため、乗客がトランクにしがみついて助かったという逸話がある。

素材選びも含め、作り手の繊細さ・正確さが幸いし、そのような造りとなったのだろう。

それぐらい精密な造りとなっているトランクだが、堅牢さを生み出した理由としてもう一つのニーズがあった。

盗難だ。

1900年代、ヨーロッパの旅行者は、荷物のほとんどをトランクに入れて運んでいた。

そのため、泥棒はトランクさえ狙えば金目のものが手に入ってしまう。

そこで、ルイ・ヴィトンは息子とともに、2個のスプリング式バックルを用いた錠前のシステムを採用した。

そもそも、自体に鍵を付けてしまおうという発想が、当時は画期的だったのだ。

その信頼性は絶大で、現在も使用されている技術の一つとなっている。

もちろん、特許も取得済みだ。

プラダ(トートバッグ)

イタリア王家の贔屓(ひいき)となり、高級素材をふんだんに使ったが人気を集め、今なお存在感を発し続けているブランドだ。

しかし、古い技術・素材だけにこだわらず、必要であればナイロンなどの素材も積極的に活用し、高いデザイン性と機能性を備えた製品を生み出し続けている。

プラダのトートバッグとして有名なものの一つに「テスートゴーフル」がある。

シックなデザインの中に金色の金具が映えるフォルムは、まさにプラダならではの存在感を思わせる。

しかし、このバッグにおける最大のポイントは、贅沢にタックが取られた「ギャザー」にある。

ギャザーとは、布地に1本の線を縫ってから,その縫い糸を引き絞って縮めて作る「人工的なシワ」のことを指す。

洋裁を経験したことがある方なら分かるだろうが、縫い合わせる段階では簡単でも、それを均等に美しく整えるのは難しい。

一見簡単に思える技術の精度に、職人の意思が表れるのだ。

イルビゾンテ(バッグに使われる革)

イタリア・フィレンツェ創業のブランド。

日本で知名度を上げたのは、おそらく「日本人に好かれる姿勢」を製品で表現していたことが理由だろう。

イルビゾンテは、持ち主に「寄り添う」を作るブランドだ。

デザイナーのワニー・ディ・フィリッポ曰く、

「雨の日も晴れの日も一緒に持ち歩いて欲しい」

という、作り手の想いが込められている。

そのコンセプトが如実に表れているのが「革」だ。

イルビゾンテの革は、経年による変化が早く、1年で自分色に染まる。

その反面、傷つきやすく、雨ジミも付きやすい。

しかし、それが全て「あえて」だとしたらどうだろう。

自分が生きた証を革が刻んでくれるのだと考えたら、汚れた分だけ手放したくなくなるのではないだろうか。

革製品のデメリットをメリットに変えるイルビゾンテの革工場の技術は、モノを大切に使い続ける日本人のメンタリティに訴えたのだ。

ソメスサドル(ビジネスバッグ)

日本における数少ない「馬具メーカー」の一つ。

1964年創業以来、変わらず堅い技術力に裏打ちされた製品を世に送り出してきた。

一般的な革製品・ブランドには満足できなくなってしまった人が、ここに辿り着くことが多いブランドである。

ソメスサドルは、ハンドメイドにこだわる。

また、修理にもこだわる。

なぜなら、基本となるのが「馬具」造りだから。

馬に人が乗る際に必要な「鞍(くら)」は、人馬一体に重要な役割を果たす。

市販のものもあるが、一生使うことを考えてオーダーメイドを選ぶ人も多い。

そんな技術を継承しているため、にもオーダーメイド精神が宿る。

ソメスサドルの製品の中でも、ひときわ人気を集めているものの一つに「ビジネスバッグ」がある。

一つの商品につき、34人の職人がチームを組んで作り上げるは、馬具用の特殊なミシンを使って仕上げられる。

思い入れを持って作られたは持ち主に大切に使われ、やがて修理のために工場に帰るときも、温かく職人が迎え入れてくれる。

持ち主も、職人も、丁寧。

それが、ソメスサドルというブランドの特徴かもしれない。

ポーター(ウォレット)

は、革が全てではない。

そう教えてくれるブランドだ。

デイリーユースを極めたブランドの一つが、ポーターと言っても過言ではないだろう。

製作所では、革小物もラインナップされていることが多い。

お金を持ち運ぶという意味では、ウォレットものカテゴリに入るのかもしれない。

手元で使う小物だからこそ、細かなところまで評価の対象となる。

ウォレットを想像するとき、多くの人が「革財布」をイメージすることだろう。

それ以外の素材について、魅力を感じないという人も少なくない。

そんな人は「PORTER SMOKY」のロングウォレットを、一度使ってみて欲しい。

縦糸にコットン・横糸にナイロンを使って織りあげた生地は、実にしなやかで使いやすい財布に仕上げられている。

カード入れやファスナー部分はしっかりと縫製されており、素材の柔らかさと収納部分の丈夫さを両立させている。

「長く使いたい」と、持ち主に思わせてくれること間違いなしだ。

あなたの大切なものを運び、守るために、職人はいる

情報や質問や感想などコメントを残そう!