普段履いているお気に入りの革靴やブーツ。
汚れを拭き取ったり、ブラシで磨いたり、靴と会話できる大切な時間だ。
靴を磨こうとしているとき、多くの人はどうやったら靴をもっと綺麗に磨けるのかを考えている。
でも、たくさんの足を支えるパートナーである靴を、毎日修理している靴職人はちょっと違う。
「どうすれば靴が気持ちよく輝いてくれるだろう」
言葉にはあえてしないと思うけど、きっと、そんなことを考えているはずだ。
靴に必要なものは「自然な潤い」
靴のお手入れと聞くと、私たちはつい「靴を綺麗に磨く」ことを考えがちだ。
見た目的に綺麗になるのは分かりやすいし、手入れをしている気持ちにもなる。
でも、肝心の靴にとってはどうなのだろう。
太陽の光を反射するくらいピカピカになることが、靴にとってはうれしいことなんだろうか。
プロは答えを知っている。
靴を大事にしている素人が手をかける「鏡面磨き」
水とワックスで革表面を磨く鏡面磨きは、綺麗にできると見た目にも充実感がある。
しかし、これだけだと革には栄養が行き渡らない。
女性の肌で例えるなら、ワックスで靴に化粧を施しているだけ。
地肌をケアせず続けていると肌が荒れてしまうのと同じように、革もやがて輝きを失ってしまうのだ。
プロが大事にしているのは「靴磨き」
では、プロである靴職人は、何を大事にしているのか。
それは基本中の基本。
靴の汚れを丁寧に取り除いて、それからクリームで革に栄養を与えていく。
ただ、基本と言ったら本当に基本なのだ。
「何もかも」丁寧に取り除いて磨いていく。
例えば、靴の中とか。
布を使って、靴の中にあるゴミを取り除いていく。
靴下を履いたつま先は、思っている以上にいろいろなものを吸いつけている。
だから、そういう細かいところからしっかりやる。
靴紐を外して、普段見ることのない部分にまで思いを巡らしブラッシング。
それから指に布を巻いて拭き込んでいく。
一通り汚れが落ちたら、表面にクリームを塗って栄養を与える。
そしてまたブラッシング。
余分にはみ出したクリームを布で拭き取れば、靴磨きは完成だ。
外面か、内面か
靴のケアは人間をどう評価するのかに似ている。
「人間は見た目が9割だよ」
「内面からにじみ出る優しさが素敵」
どちらも一理あるが、少なくとも靴においては「内面」が大事。
ブラッシング・ローションで汚れを落としてからクリームを塗りこむときも、自分の指の体温で溶かしながら塗る。
少しでも、栄養と靴に対する感謝の気持ちが革に届くように。
そうやって丁寧にケアしていると、靴もそれに応えてくれる。
使い込んだブラシの油分だけで、光沢がよみがえってしまう。
そんな靴なら、いくらでも磨いて履きたくなるはずだ。
ブーツの表面は汚れや空気に敏感である
ブーツをケアする場合、環境の変化には敏感になった方がいい。
見た目にはゴツく見えるようなブーツでも、きちんと保管しないと汚れが目立つようになるし、次に履くときにニオイに悩まされたりする。
分かっていても、なかなかケアできないと感じる人は多い。
そこでプロの出番。
プロは手間暇かけて、しっかりと手入れをするから評価されるのだ。
湿気が多すぎても、少なすぎてもいけない
ブーツの革を適度な状態に保つには、湿気が多すぎても少なすぎてもいけない。
湿気の多い状態で保存すればカビが生えることもあるし、そのままほっといても表面がひび割れてしまう。
言葉で説明すると絶妙なケアに感じられるが、ここでもやっぱり「基本」が大事。
「どうすれば靴が気持ちよく輝けるのか」
ブーツの場合はどうなのかを考えても、やっぱり基本に戻ってくる。
汚れを取って、湿気を取り去って、最後に乾燥しないようにクリームを塗る。
あとは、それをどれだけ丁寧にできるかが勝負だ。
あらゆるパーツの細部まで汚れを落とす
ブーツの場合も、本格的に磨くなら靴紐やバックルのようなパーツは全て取り外してしまおう。
紐・バックルに重なった部分の革などが落としやすくなるから。
汚れを丁寧に落とすのは靴と一緒だが、ちょっと気になるのがニオイ。
革専用の除菌消臭スプレーを使ってニオイをシャットアウトできるようにする。
靴箱が汚れていたりニオイが充満していると意味がないので、靴箱もしっかり除臭することが大切だ。
型崩れで足を痛めないためにできること
ブーツを綺麗にする際に、覚えておいて欲しいことがある。
それは、ブーツ用のシューキーパーを靴に入れてからケアを始めることだ。
ブーツは靴の形を維持しておかないと、型崩れを起こしてしまうことがある。
また、元の形が分からないと細部の状態が分からないし、クリームを指で塗るときにムラが出ることもなくなる。
自分の足を毎日遠くへ連れて行ってくれる大切な存在だからこそ、持ち主が大切にケアして欲しい。