今回ご紹介するのは、一匹の日本犬を模った彫刻でございます。
しかし、この彫刻は一般的な彫刻とは異なり、一本の木から削り出して造った一本造りの作品になります。
筆者は今まで様々な彫刻を目にしてきましたが、それぞれに製作者の思いが詰まった作品であり、その技術は真似できないレベルの伝統的なものばかりでした。
しかし、今回の彫刻に関してはシンプルに一本の木から造られたという製作者の強いこだわりが詰まった逸品であり非常に感銘を受けております。
そもそも一本造りとは、頭や体以外の手足や細かいパーツを別の木から継ぎ足したものを一本作りと呼ばれることがあります。
ですが、この彫刻を製作した田中一光氏は全てのパーツを一本の木から掘り出しており、これぞ一本造りといえる作品になっています。
一見、崇高に造られた一匹の日本犬に見えますが、その素材を知ることにより田中氏のじっくりと丁寧に仕上げ作品に込める思いを感じられそうです。
また、その素材は飛騨の厳しい風土で育った樹齢200〜300年の木を伐採したのち、20〜30年寝かしベストな状態の木材だけを使って造られたというかなり希少な芸術作品になっています。
ちなみに製作者の田中氏は今作の他にも多数の一本造りを出しており、その才能は寺院に認められるほどの腕前であり、盆栽ファンが非常に多くいます。
まさか、一本の木から造られているとは思えないくらい、今にも動き出しそうなほどの躍動感を感じさせるこの日本犬は、実際に手にとってじっくりと眺めてみることにより初めてその魅力を感じそうです。