匠名/メーカー名:阿以波
うちわといえば夏などの暑い日に仰いで涼しむために使うものですが、そんなうちわにも伝統のある逸品がいくつもあります。
元々昔からのいい伝えでは、仰いで涼むことだけではなく魔を打ち払うという縁起物でもあるといわれています。
そんなうちわですが、現代では何気なく日常的に使っているうちわでも、種類によっては昔から伝統の継承により独自の技術と卓越された技によって職人が作っています。
そんな数々の伝統のうち今回は日本三大うちわのひとつでもある京うちわをご紹介いたします。
今回ご紹介する逸品のうちわは、1689年創業という伝統中の伝統である京うちわでは有名な阿以波さんが作っている「桔梗」です。
写真は青、赤ですが、他にも緑、紫があります。見た目から、落ち着いた雰囲気の植物が描かれていますが、その作り方や素材などに伝統による独自性が採用されています。
そもそも、京うちわですが特徴の一つとして象徴的なのが構造としてうちわの面と柄を別々に作り、後から柄を差し込むやり方である差し柄となっています。
この「桔梗」を作り上げた阿以波では、内輪の骨格となる加工から紙を貼り合わせ、仕上げまですべての工程を手作業で行っています。
もちろん、すべて日本産のものを素材としており竹は丹波から、紙は越前から取り寄せています。素材の選択だけではなく柄の部分を栂や杉材など使いわけるなどの細かい工夫をしています。
うちわの見た目だけではわからない魅力がその一枚に込められていることがわかるかと思います。実際に持ってみた感触や仰いでみた感覚、風の感じ方など、持ってみて触ってみないと本当の魅力が伝わらない気もします。
職人によるこだわり抜いた製法が伝統を受け継ぎ、日本の文化を守り続けていると私は考えます。私たちが何気なく使っているうちわの一つもこういった職人によるうちわがあるからこそ存在していると思っています。
熟練の職人が手掛けるうちわを自分の手で仰ぐ機会なんてなかなかないもので、今回の逸品に出会うまで気にすることもありませんでした。
この「桔梗」は両透うちわのため本来では目で見て楽しむための観賞用のうちわとして嗜むものではありますが、自分用として手元に一枚は置いておきたいと思ってしまうばかりです。