匠名/メーカー名:常滑焼まるふく
誰もが一度は見たことのある、招き猫や急須などが特に有名な常滑焼。私は愛知県に住んでいるのですが、より目にする機会が多く、常滑焼の素朴な作りについて興味を抱いていました。
常滑焼は愛知県常滑市で昔から作られている歴史ある焼き物です。その歴史は平安時代初期まで遡ることができ、日本六古窯のひとつに含まれています。ちなみに日本六古窯には同じ愛知県瀬戸市の瀬戸焼も含まれています。
平安時代の後半には、すでに壺や山皿などの焼き物が3,000基もあった六窯で焼かれていました。この時代に焼かれたものは、古常滑と称されており、価格も非常に高いそうです。
常滑焼の特徴は知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土を使用している点です。その性質を生かして鉄分を赤く発色させることを朱泥(しゅでい)と言い、常滑焼を特徴付ける色の焼き物が誕生しました。
常滑焼の中でも広く知られているのが、急須。おじいちゃんの家に行けば必ず置いてありましたね。常滑焼の急須は鉄分がお茶の苦みや渋みをまろやかにすると言われていて、現代でも愛用されています。歴史を感じる急須で入れたお茶は美味しく頂くことができますよね。
質の高い製品を作る職人たちが、1,000年の歴史の中で技術を受け継ぎ【手ひねり成形】などの技法を伝承しています。平安時代から使われる手ひねり形成の中でも【ヨリコ造り】は大きな壷など大物の製品を制作するときに用いられる手法です。ほかにも盆栽鉢を作る時の【押型成形】や電動ロクロを使う【ろくろ成形】ばど製造方法も多岐にわたります。
朱泥の急須の制作過程を簡単に紹介します。
①土を練る
採取した粘土からより細かい粘土を抜き取り、その粘土をよく練りドロドロの液状にしていきます。
②ろくろで引く
急須は形ごとに形成していきます。胴体、ふた、取っ手、口、と作っていきます。滑らかになったら乾かしますがそれぞれの乾かき加減がばらつかないように気を付けなければいけません。
③各部分の仕上げ
乾燥が進み固くなってきたら、余計な部分を削りきれいに整えていく作業です。胴体とふたが完全に合うように、微妙な調整をしていきます。この段階でどれだけ細かく仕上げられるかが、質の高い製品となるポイント。
④組み立て
口、取っ手を胴体に取り付ける組み立ての工程。丁寧になじませないと仕上がりの状態に影響するので職人の力量が問われます。
⑤乾燥
⑥素地みがき
⑦彫刻
⑧焼成
⑨墨入れ、水洗い
⑩仕上げ
伝統的な技術と職人の思いが込められて制作されている常滑焼。これからはその歴史を感じながら使用してみたいと思います。