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日本のものづくりデザイナー14~プロダクトデザイナー・柴田 文江(しばた ふみえ)~

海外と日本の伝統工芸を融合させた作品づくり


柴田文江氏 参照:https://www.axismag.jp/posts/2022/03/454643.html

柴田文江氏は、1965年生まれで山梨県の出身です。1990年武蔵野美術大学工芸工業デザイン科卒業、2014年から2022年までは同大学の教授も務めています。インダストリアルデザインを中心にしていますが、照明器具や日用雑貨、ホテルのトータルデザインなど、幅広い分野で活躍しています。代表作には無印良品「体にフィットするソファ」/オムロン「けんおんくん」/カプセルホテル「9h (ナインアワーズ)」などがあり、近年では伝統工芸のコンセプトを持った照明も手掛けています。

実家での環境がものづくりの原点


柴田氏がデザインしたオムロンヘルスケア体温計 参照:https://remy.jp/item/fumie_shibata

柴田氏の実家は山梨で織物に携わっていたそうで、子供の頃から周囲には工芸に関するもので溢れていました。当時はすべてが手作りで、手間ひまをかけて織物づくりをしていて、その体験が現在のものづくりに対する姿勢につながっているといいます。
工芸とは、日常生活に溶け込んでいるものです。柴田氏は日常生活で使用するものをデザインするときの考えを次のように語ります。「暮らしや生活が中心で、物が主役にならないようにつくりたいと思っています。自分がデザインしたものが暮らしのなかで、でしゃばらない、使う人が自由になれるようなものをデザインしたいといつも思っています。それが結果的に長く大事に使ってもらえることになると思うんです」
その言葉のとおり、体温計やソファなど、柴田氏による日常品のデザインは突出したデザインではなく、機能的で日常に溶け込むような自然な雰囲気を持つ製品になっています。

ヨーロッパのボヘミアガラスと日本文化の融合


エル・デコ インターナショナル デザイン アワード受賞のフロアライト「BONBORI」 参照:https://www.tistou.jp/bonbori?lightbox=dataItem-ktdnaj9x

柴田氏のなかの工芸品への思いは、近年の作品にも現れています。それは2021年、世界的な雑誌である「エル・デコ」が主催するエル・デコ インターナショナル デザイン アワードの照明部門でグランプリを受賞した「BONBORI」です。
旅先でボヘミアガラスに興味を持った柴田氏は、そのヨーロッパテイストの工芸品に日本というアジアの要素も取り入れることを思い立ちました。イメージは、日本の伝統文化である祭りで参道を照らす紙製のあかり「雪洞(ぼんぼり)」を意識して、優しい光を演出しています。このアイデアについて柴田氏は次のように語っています。「デザインは言葉よりも先にイメージが生まれて、後から言語化できるものだと思っています。だからBONBORIも最初から雪洞(ぼんぼり)というモチーフを思いついたわけではなくて、まず形のイメージがあって、最後に言葉で補うという流れで生まれました」。
まず、感覚的にものがあり、そこから論理が発生するという、柴田氏のデザイン論の一端を表す言葉だと言えるでしょう。

デザインを社会に浸透させていく


無印良品の「からだにフィットするソファー」 参照:https://www.japandesign.ne.jp/kiriyama/74_fumie_shibata.html#inline6

柴田氏は国内外で活躍する経験豊富なデザイナーです。毎日デザイン賞、Gマーク金賞、アジアデザイン賞大賞・文化特別賞など、数々の受賞歴もあり、大学教授としてデザイナーを育成する立場にもあります。その柴田氏は、「デザイン」をどのように捉えているのでしょうか。

工芸と向き合うにはリスペクトを持つこと


京都のカプセルホテル 参照:https://openers.jp/design/design_features/15624

海外や日本の工芸品にインスピレーションを与えられることも多いという柴田氏ですが、その向き合い方についてはは、非常に慎重です。
「伝統工芸はつくれる人でないとつくれなので羨ましい。ズカズカと踏み込んでいって、安易に手を出すわけにはいきません。敬意とデリカシーを持ちながら繊細に関わっていければと思います」と語るように、実家が工芸に携わっていただけに、大いなるリスペクトを持っているようです。

デザインは製品のイメージを転換させる手法


IDカードホルダー 参照:https://openers.jp/design/design_features/15624

伝統工芸と同様に、デザインにも実はその製品をつくる過程の苦労や、現代で言えばテクノロジーといった背景があります。しかし、出来上がったデザインというのは、前述したように日常生活に溶け込み、自然に存在しているように感じます。
最先端のテクノロジーや複雑な生産工程を経た製品でも、デザインによってそのようなハードな面は感じさせずに、柔らかな日常品に姿を変える。それがデザインだと柴田氏は考えます。
「人間がデザインに求めるものと、テクノロジーの享受のあいだにあるものが、デザインではないでしょうか。人間のための機械やテクノロジーといった最新技術を、人間の肌なじみの良いものにしていく、というのが私の仕事だと思っています」と語る柴田氏。20年間のデザイナーとしてのキャリアを持っても、「デザイン」とは何か、ということがまだわからないといいます。ただ、その本質を探ろうとしながら苦労することが、自分のオリジナリティであり、良いデザインにつながるのだろうとも思っているそうです。

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