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日本のものづくりデザイナー41(後編)~九谷焼 ろくろ師 山本 浩二(やまも とこうじ)/絵付師 山本 秀平(やまもと しゅうへい)~

兄弟で受け継ぐ九谷焼の伝統


山本 秀平氏 参照:https://www.athome-tobira.jp/story/162-yamamoto-koji-shuhei.html

前回の前編ではろくろ師である、兄の山本浩二氏を中心にご紹介してきました。後編では、兄が製作した素地に鮮やかな絵を描く、絵付師山本秀平氏を中心にご紹介していきましょう。

「自分にとって絶対に必要な存在」、兄の信頼に答える


絵付けの様子 参照https://www.discoveryjapan.jp/program/athome/8xwpqlw0z6/

器を製作する兄、浩二氏にとって、絵付師である秀平氏は「自分にとって絶対に必要な存在」と語るほど、大きな信頼を寄せています。
そして、秀平氏も「兄は形にもこだわり、赤絵具が映えるような白い素地を作ってくれ、その素地は『絵を描きたい』と思わせてくれます」と語るように兄の技術に対して敬意を持って仕事をしていることがわかります。
また、絵付けに関しては次のようにも語っています。「良い形をどのように活かすか、どうしたら形が活きるような絵になるかを常に考えます。絵は形を良くも悪くもしてしまいます。形を生かすも殺すも絵付け次第なんです。ですから、毎回筆を握る時は緊張します」
兄の信頼に応えられるよう、毎回緊張感を持って絵付けに臨む秀平氏。このような兄弟2人の信頼関係が素晴らしい作品を生み出す原動力となっているのです。

九谷焼の工程②


赤絵細描の皿 参照:https://www.big-advance.site/c/147/1241/works/detail/3

では、秀平氏が担当する絵付師の仕事とはどのようなものなのでしょうか。 絵付師が主に行う工程は、まず、釉薬(ゆうやく)を掛ける前に絵付けをするの下絵付けです。一般には染め付けと言われ、素焼きが終わった素地に、染め付け呉須(ごす)(酸化コバルトを主成分とする青色の顔料)を使って下絵付けを施します。
その後、本窯焼きという工程を経て、焼成した器にさらに色絵付けを施します。九谷焼は、この段階を踏むものが多く、九谷五彩を中心とした上絵の具により、独自の加飾を行っていく段階になります。
絵付師の腕の見せ所といっても良いでしょう。この上絵付けの後には上絵窯と言って再度焼成することで和絵具がガラス質に変化して、透明感とともに色も鮮やかな色彩になり繊細な文様が浮かびあがります。この透明感が九谷焼の特徴の1つでもあります。

兄弟で蘇らせた九谷焼幻の技法


新技法「白砡描割(はくぎょくかきわり)」による制作風景 参照:https://www.athome-tobira.jp/story/162-yamamoto-koji-shuhei.html

切磋琢磨をして独自のスタイルを確立してきた2人でしたが、実は究極の目標が有りました。それは、明治、大正期の赤絵の名工、初代 中村秋塘(なかむらしゅうとう)が生み出した砡質手(ぎょくしつて)という絵付け技法を再現すること。ただ、白絵具で紋様を立体的に盛り上げて描かれるこの技法は長い間、幻の技法とされ、誰も再現できないでいたのです。

兄弟の熱意が不可能を可能に


完成した「白砡描割(はくぎょくかきわり)」の作品 参照:https://www.facebook.com/hashtag/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E7%A7%8B%E5%A1%98/

砡質手(ぎょくしつて)の難解な技法は、現代では再現不可能とも言われていましたが、山本兄弟の九谷焼にかける熱意は、長い試行錯誤の末についに再現に成功をします。そして、白砡描割(はくぎょくかきわり)という新たな技法として、生まれ変わったのです。
秀平氏は「秋塘さんの作品は、手を抜かず美しいものを作りたいというエネルギーに満ち溢れています。技法を受け継ぐだけでなく、秋塘さんの功績を汚さないように、自分も手を抜かずに美しいものを作り続けたいと思います」と、技法を受け継ぐ抱負を語ります。

ろくろ師山本浩二と絵付師山本秀平だけしか生み出せない作品


市販されている作品。空想上の花「宝相華(ほうそうげ)」をモチーフに、外側は白砡描割(はくぎょくかきわり)、内側には赤絵細描を施した珠盃(ぎょくはい)。 参照:https://www.fujingaho.jp/culture/craft-tableware/g42313782/ishikawa-handcraft-230107/?slide=7

「白砡描割の作品は、全体を見ると白っぽく見えるため、形が普通だとインパクトがありません。形にこだわることで白砡描割をより一層引き立てることができるんです。作品を見る時は、まず形、その後に絵が目に入るので、形にはとことんこだわっていきたいと思います」と語る兄の浩二氏。2人の目標が叶ったことに大きな喜びを感じているようです。
幻と言われた技法を再現し、新技法として世に出すことで大きく九谷の歴史を動かした2人の職人。これからは伝統技法を構成に伝えると同時に、ろくろ師山本浩二と絵付師山本秀平だけしか生み出せない作品を全世界に送り出していくことでしょう。

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