日本の大学から海外留学、世界を知るデザイナーを目指す
岩元航大氏 参照:https://www.pen-online.jp/article/010405.html
岩元航大氏は1990年、鹿児島県の生まれ。2009年神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科に入学、その後はスイスのローザンヌ美術大学に留学するなど、海外でのデザインコンセプトを国内で展開して注目を浴びているデザイナーです。東京を拠点に活動し、個性的なデザインのスツール「BENT STOOL」などが人気を博しています。
大学在学中に参加した「デザインソイル」が原点となる
参照:https://www.kohdaiiwamoto.com/paripari
岩元氏は、神戸芸術工科大学在学中、「デザインソイル」というチームに所属して作品制作をおこなっていました。「デザインソイルでは1年間の最初にテーマが決まり、学生も教員も一緒にディスカッションを繰り返しながらコンセプトを詰めて、作品をつくっていました。年齢に関係なく率直に意見を交える感じがとてもよかった」と語るように、自由な発想で作品づくりに没頭できる環境が、非常に気に入っていたようです。
さらに、チームを通してミラノでの海外出展も経験、同時に世界のデザインに驚愕します。「コンセプトも、そのベースになるリサーチも、さらに作品をビジネスや社会に結びつける発想も、日本とはここまでクオリティが違うのかと衝撃を受けました」とそのときの心境を語る岩元氏。その体験は、「海外のデザインをもっと知りたい」という希望を募らせることになります。
留学先にスイスを選んだ理由
参照:https://www.kohdaiiwamoto.com/tube-flattening-stool
岩元氏が選んだ留学先は、スイスのローザンヌ美術大学。デザイン教育ではヨーロッパでも指折りの学校ですが、岩元氏がこの留学先を選んだのには、明確なビジョンがありました。「イギリスはアウトプットもデザイナー自身もスターになったりアーティスト志向、オランダは科学的であり実験的な手法だと自分では感じていました。一方スイスは歴史的に産業デザイン的に感じていて、授業を通じてそんな実践的な力を身につけたいと思いました。それでスイスに留学することに決めました」。
産業とデザイン、岩元氏はその関係性について、神戸での学生時代から深く考えを巡らせていました。そして、自分のデザインの方向性をローザンヌに見出したのです。
産業としてのデザイン、そして、その先へ
参照:https://www.kohdaiiwamoto.com/pvchandblowingproject
岩元氏の目指すデザインは、産業を意識したデザイン。もちろん、多分にアーティスティックな面も持ち合わせていますが、産業やビジネスとしてのデザインをアウトプットすることを目標にしています。そして、さらにその先の段階も視野に入れて活動をしているといいます。
ビジネスとしてのデザイン
参照:https://www.kohdaiiwamoto.com/pvchandblowingproject
「私がデザインというものを考える上で根底にあるのは、デザインという言葉はビジネス用語のひとつにすぎないということです。商品を売るための戦略のひとつがデザインです」と語る岩元氏。産業を支えるため、ビジネスの手段としてのデザインが重要だと感じているようです。
ただ、決して機能性だけを追求しているわけではありません。岩元氏のデザインは、あるべき空間に置かれたときに、美しくなければいけないという、基本的な条件もクリアしているものなのです。造形的な美しさ、機能的な美しさ、そして、芸術的な美しさ、それらをどう表現するのかを、岩元氏は模索しているのです。
好奇心を持って、次のデザインを生み出す
参照:https://www.kohdaiiwamoto.com/pvchandblowingproject
岩元氏の原動力となるのは、好奇心だといいます。例えば、最近コンセプトを求めているテーマは歴史です。「鎌倉時代、中国から日本にもたらされた禅宗の高僧を描いた肖像画や彫刻(頂相)には、しばしば椅子に座った僧侶の姿が見られる。もしも日本で、その椅子が独自に発展し、定着していったとしたら?」などと興味を持ったことに対して、深く追求することで、アイデアを膨らませています。
もちろん、そのアイデアに対して、クライアントが見つからずに製品にならないこともあるでしょう。しかし、それでも岩元氏は、「次のデザイン」をみつけるために、日々好奇心を巡らせています。その繰り返しが、これからどのような表現や製品に形作られていくのか、これからの活躍が非常に楽しみなデザイナーの一人です。