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これがないと生きていけない!あなたに時刻を教えてくれる、時計の世界を知ろう~前編~

自然現象から、より正確な時刻を求めて進化した時計の歴史

時計は私たちの生活になくてはならない存在です。それは、現代だけではなく、文明が生まれる以前から、人間は「時間を知りたい」と思っていました。遥か昔には日の出と日の入りで時間を認知していましたが、時代が進むにつれて時間への関心は高まっていき、技術の進歩とともに精巧な時計が作られるようになっていきました。まずは、その時計の歴史をご紹介します。

日時計から水時計、そして機械式へ


人間だけではなく、ほかの動物や植物においても、時間を知ることは重要なことです。ご存知のように、人間を含む多くの生物には「生物時計」という機能があり、おおまかな時間概念が備わっていると言われます。

しかし、人類はそれに飽き足らずに、さらに正確な時間を知りたいと努力してきたのです。その結果が紀元前4000年頃に現れた、最初の時計とも言える「日時計」につながりました。棒を立てて太陽の動きを影として表示し、その位置や長さによって、時刻を知るものです。

紀元前1400年からは、太陽が出ていなくても、水の流れる量で時間を測る水時計、油やローソクを使用した時計なども発明されていきました。これらはエジプトや中国、ヨーロッパなどで多く発明されたようです。1092年には、中国で水流を動力として、星の動きから時刻を知ることができる「水運儀象台」が開発されています。

ただ、大きく時計の歴史を変えたのは、ヨーロッパでした。1400年頃にはゼンマイによる小型時計が登場。そして、画期的な出来事として、1582年にガリレオが発見した「振り子の原理」があります。これにより、機械式時計の精度は飛躍的に向上したのです。その後はクオーツや電波修正技術など科学技術の発達と同じく、加速度的に時計の技術も進歩しています。

日本での時計の歴史

日本で最古の時計は、日本書紀に書かれている西暦671年のものだと考えられています。当時の天智天皇が水時計を製作して、周囲に時刻を知らせたとの記述です。

その後は、長く大陸の時計に習って製作されていたようですが、16世紀からはヨーロッパからの宣教師が天文学や西洋式時計の技術を日本国内に持ち込みます。それを参考にして、江戸時代になると数多くの時計が製造されるようになります。その中でも西洋とは違い、日の出と日没を基準とした日本独自の「不定時法」を使った「和時計」は複雑な機構で、その技術は後の国内時計産業に影響を与えたとも考えられています。

第二次世界大戦後は、「東洋のスイス」をスローガンに時計産業は成長を続け、現在では「メイドインジャパン」の時計は世界的にも認められるようになっています。

時間の基準はどこにある?時差と標準時の話し


時間というものは基準があり、例えば家にいるときに午前9時であれば職場でも午前9時です。さらに日本の場合は、東京でも北海道でも同じように時が進んでいきます。しかし、ご存知のように世界では「時差」というものがあり、日本国内のようにはいきません。

時差とはどういうものなのか

前述のように、人類は太陽の動きによって時間を認識してきました。そして、人間の生物時計も昼と夜によって設定されています。つまり、主に昼間に活動して夜に休むという太古から続く営みが人間にとって一番効率が良いのです。

しかし、当然ですが、全世界で同じ時間に昼夜が訪れることはありません。地球は丸いわけですから、それぞれの地域で時間が変化してくるわけです。多くの国では、自国の基準経線を決めて、そこを太陽が通る時刻を正午として「標準時子午線」と呼びます。そして、それぞれの国で標準時子午線は異なりますので、それが時差ということになります。日本では東経135度の兵庫県明石市が標準時子午線となっています。

グリニッチ標準時の成立

地域による時間の差、つまり時差を体系的に評価して一定の線引をする、近代社会で世界が連携をするためにはこの作業が不可欠でした。そのため、経度を使用して地球1周の360度を24時間で割った経度15度の範囲を同一の時間帯として、隣り合う地域とは1時間の時差をつけることとしました。

この基準となった、世界の標準時子午線がイギリスにあるグリニッジという都市にある「グリニッジ天文台」です。この場所は経度0度(グリニッジ子午線)となり、世界の標準時間になりました。それが「グリニッジ標準時」と呼ばれるものです。

ただし、現在では「協定世界時」というものが定められ、それをもとに時差や標準時が決められています。原子時計を使用したもので、衛星などを使用して、10億分の1秒の誤差も修正できる性能で、世界の時間を調整しています。

公共性の高いクロックとパーソナルなウォッチ


時計には大きく分けて、クロックとウォッチがあります。クロックは置き時計や掛け時計など、定位置に置いて使用する時計のことです。一方でウォッチは、腕時計や懐中時計のように身に着けて使用する時計のことです。

時計台は時を知る重要な施設だった

クロックで代表的なものは「時計台」です。機械式時計が開発された当初は、まだ小型化は難しく、時刻を知るためには時計台に頼るしかありませんでした。中世ヨーロッパで多く建造され、大きな文字盤と鐘で時刻を知らせるものが多いようです。日本でも札幌市にある時計台など、明治期に建設された時計台が残っています。

ウオッチは時計を飛躍的に進化させた

機械式時計を小型化するには、大きな技術改革が必要でした。部品も非常に小さく、組み立ても大変な作業で、当初は非常に高価なものだったようです。

しかし、その時計を製造する技術は、ほかの機械製造にも応用されていき、産業を大きく前進させたとも言われています。その後も効率的な時計製造システムがアメリカで開発されるなど、ウォッチの製造は時計を含むそのほかの産業技術を飛躍的に進化させたと言われています。

現代の時計の種類


今までご紹介してきたように、時計は時代とともに、そして人類の科学進歩とともに大きく進化してきました。現代では多彩な種類の時計が見られます。上記のように大きくクロックとウオッチという分類もありますが、この章では皆さんに身近にある時計のなかで、ムーブメントの違いなどを紹介していきたいと思います。

クオーツ時計

クオーツとは電圧をかけると、一定周期で振動する水晶の振動を利用した装置です。19世紀の終わり頃に水晶が一定の周期で振動することが発見され、その後、20世紀初頭にはその正確な時間測定の性能から研究機関等で使用されていました。当時は小型化は難しいと言われていましたが、国産時計のパイオニアであるセイコーは東京オリンピックの開催時には通常の壁掛け時計と同じサイズまで小型化することに成功、大会公式時計となります。1967年にはスイスの会社とセイコーがクオーツ腕時計の開発に成功しています。

クオーツ時計の大きな特徴は、その精度。一般的には月差15から30秒と言われています。また、1970年代にはセイコーが特許を公開したことで、多くのメーカーが参入し、価格が大幅に安くなりコストパフォーマンスに優れていることも挙げられるでしょう。

クオーツ時計の寿命は電池を交換しても10年程度と言われています。ムーブメントは電子回路になりますので、劣化をすると回路自体が動かなくなる可能性が高いのです。

電波時計

電波時計とは、名称の通り電波で時刻の誤差を修正する時計です。「JJY」という総務省管轄の無線局から、原子時計の時刻を受信して時刻修正をおこなっています。

大きなメリットとしては、電波が受信できる環境であれば、ほぼ誤差がなく正確な時刻を知ることができます。一方で、電波を受信できない環境だと、その時計の誤差が反映されてしまいます。ムーブメントは基本的ににクオーツを使用していますから、時計の寿命としては上記のクオーツ時計と同様です。

機械式時計

機械式時計とは、ゼンマイ式で動作する時計のことです。クオーツは電子回路で電池で動作するのに対し、多くの歯車などで動いています。大きな欠点としては、クオーツと比較して誤差が大きく、クオーツの月内誤差が機械式の日内誤差とも言われます。クオーツ全盛期の1970年代から1980年代にかけては安価で正確なクオーツ時計に需要が集中して、「クオーツショック」と称されるほど、機械式の時計メーカーは大打撃を受けてしまいます。

しかし、1990年代に入ると、高価ではありますが、味わいのある機械式時計が見直されるようになり、クオーツには敵わないものの、多くの愛好家が機械式時計を買い求めるようになっています。

機械式時計が好まれ続ける理由と、時計職人という職業


では、なぜクオーツよりも高価で精度も劣る機械式が、現代でも愛されているのでしょうか。時計を持つ第一の目的は、時間を知ることにありますが、携帯電話が1人に1台以上普及している現代では、時計に頼らなくてもそれほど難しいことではありません。むしろ、時計は愛着のある大切なコレクションアイテムやステータスだと思う方が多いのではないでしょうか。そして、その機械式時計を支えているのが、時計職人なのです。

機械式時計の魅力

何度も申し上げますが、時計の精度とすればクオーツや電波時計のほうが断然正確です。しかし、それでもなお、機械時計にはそれを凌駕する魅力があります。それは、精密に作られた部品やそれが見事に調和して動作している様子であり、独特の質感であり、時計の動く表情でもあります。時計職人が丁寧に仕上げた時計は、多くのストーリーが詰まった味わい深い逸品と感じられます。

さらに、機械式時計は、電子部品とは違い、定期的にオーバーホールを重ねれば、長期間の使用も可能です。もし、古い機種で部品が破損をしても、優秀な時計職人であれば自作も可能です。機械式時計は、世代間で受け継いでいくこともできるのです。

機械式時計には時計職人が欠かせない

機械式時計には時計職人の存在が欠かせません。製造や修理までをおこなう時計職人は日本ではそう多くありませんが、世界的に注目される職人もいます。時計の本場はスイスと言われますが、日本にも世界に誇る「セイコー」などのメーカーが高級機械式時計を製作しています。

後編の記事では、時計職人にスポットを当てて見たいと思います。後編もぜひ、お読みください!

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