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日本のものづくりデザイナー48~ジュエリーデザイナー 村松 司(むらまつ つかさ)

生命の多様な姿をジュエリーで表現する


村松司氏 参照:https://www.kobomuramatsu-jewelry.com/about-me

村松司氏は1964年山梨県の生まれです。山梨県立宝石美術専門学校を卒業し、金属加工職人としてさまざまな経験を積み、1990年にジュエリーデザイナーとして独立しています。エナメル技術を駆使したその作風は、草花や昆虫をモチーフとした独自の世界観を表現しており、多くの人から高い評価を受けています。今回は職人的な技術を持つジュエリーデザイナー村松司氏をご紹介します。

完成までの全工程を自身でおこなうスタイル


特徴的な造形をしているトケイソウをモチーフにしたペンダント 参照:https://www.kobomuramatsu-jewelry.com/collection

ジュエリーデザイナーは、主に金や銀の貴金属、宝石などを使用してデザインをおこなう場合と、貴金属などに限定をせずに、あらゆる素材でジュエリーの製作までをおこなう場合があります。村松氏は後者の工程により、ジュエリーを製作するデザイナーです。
貴金属加工、宝石研磨も含めた全工程を一人でおこなうことによって、驚くほど精細な作品を創り出します。その技法は、国内ではあまり見られない高度なエナメル技法から生まれるもの。「自然界のナチュラルな色合いを表現するためにエナメル技法を使っています。出したい色を出せるようになるまで7年以上かかりました。エナメルの色は炉の中の温度の環境設定だったり、エナメルを張る面積だったりと、色んなことに影響を受けますから、それをずっと研究してきたんです」と村松氏自身が語るように、難度の高い技術なのです。

難度の高い技術だからこそ出来る表現


ハシビロコウを配した菓子器です。中には水晶系の石で制作した金平糖 参照:https://www.kobomuramatsu-jewelry.com/collection

エナメルはガラス質の材料で、熱で溶かして加工をしていきます。その歴史は古く、古代エジプトやキリシア時代にまで遡るとも言われています。
このエナメル技術は非常に美しい作品を生み出しますが、高度な技術が必要とされるため現在ではあまり製作されない傾向にあります。村松氏もよく使用する「プリカージュ」という技法は、特に難易度が高く、何層にもエナメルを重ねてゆく必要があります。しかし、その作品は、まるでステンドグラスのように美しく輝くものになります。
非常に根気がいる作業ですが、このように難度の高い技術を用いることによって、村松氏の作品はまるで生命を持っているかのように、生き生きと輝くのです。

極限まで追求したリアリティと精巧なディティールが村松作品の魅力


ブリカージュ技法で制作したウツボカズラのペンダント 参照:https://www.kobomuramatsu-jewelry.com/collection

1990年に工房マツムラを開業して依頼、さまざまな展示会を開催してきた村松氏。宝飾産業が盛んで、出身県である山梨県はもちろん、イタリアやスイスなど海外においても高い評価を受けています。その魅力は、極限まで追求したリアリティと精巧なディティールにあります。

自然を観察してヒントを得る


バネじかけで羽が開くてんとう虫のブローチ 参照:https://www.pref.yamanashi.jp/shokuninryugi/shokunin/story0021.html

村松氏の作品づくりは、自然を観察することから始まります。「自然界には人が思いつかないような美しいカラーリングだったり造形美があって、それに触発されて作品を作っています。植物なんかも普通に散歩してて落ちてる物を拾ってサンプルとして集めています。近所じゃ変わり者だと思われてるかもしれない(笑)。リアリティを追求するために実物を見ながら作品を作っています」と語るように、アトリエには昆虫や植物を標本にしたものが多数あるそうで、それらの特徴を見事に作品へと昇華サせているのです。

精巧ななギミックと長く身につけられるための技術


タランチュラをモチーフに、色鮮やかな表現を施したブローチ 参照:https://www.kobomuramatsu-jewelry.com/collection

村松氏の作品の中には、リアルな外観に加えて、精巧なギミックを持つ作品もあります。例えば美しい光沢を放つてんとう虫のブローチは、バネ仕掛けて羽が開くようになっています。
また、その優れた技術には、身につける人への気遣も込められています。エナメルはガラス質ですから割れてしまうこともあります。修理をするには800度という高温炉での作業が必要ですが、一般的なものはエナメルが石に焼き付けてあるため、石がだめになってしまうのです。しかし、村松氏の作品は石のパーツとエナメルのパーツが簡単にネジで取り外しできるようになっていて、エナメルだけを修理すっることが可能です。細部にまでこだわり、長く身につけてほしい、という気持ちが込められた工夫といえるでしょう。
「作品を通じて『生命力』『やさしさ』『あたたかさ』が伝わり、多くの人々に感動を与えられるような作品を生み出すこと」が目標だと語る村松氏。今後も人々を驚愕させるリアリティア触れた作品を創り出していくことでしょう。

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