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日本のものづくりデザイナー50~木工芸 駒師 住谷 考蔵(すみたに こうぞう)

将棋の駒に魅了された平成生まれの駒師

住谷 考蔵氏 参照:https://twitter.com/AthomeTobira/status/1734498327687786873/photo/1

住谷考蔵氏は、1989年(平成元年)大阪府の出身です。同氏は高校生の頃に将棋の駒に興味を持ち、そこから独学で製作するほど駒に魅了された少年でした。その後は将棋駒愛好家の活動にも積極的に参加をすることで、ますます駒の奥深さを知ることとなり、現在では平成生まれの若き駒師として、木工芸界から期待されています。

ふとしたきっかけで起きた駒との出会い

第41作 源兵衛清安 盛り上げ駒 島黄楊根柾杢 参照:https://sumi-76fu.com/shogi/shogi41/

住谷氏と駒との出会いは、日常の中のふとしたことがきっかけでした。高校生の頃に実家にある将棋の駒を何気なく見ていたときに、一文字一文字が微妙に違うことに気がついたのです。
その駒は量産品ではなく、職人が手彫りで製作しているものでした。それを知った住谷氏は、元々工作が好きだったこともあり、駒を作ってみたいと思いたちます。
しかし、インターネットを駆使することで、材料や道具のことはわかってきましたが、肝心の詳しい製作過程が分かりませんでした。そこで、住谷氏は大胆な行動を起こします。将棋駒の愛好家や研究者にメールを送り、アドバイスを仰いだのです。「自分で駒を作りたい」という強い思いは、この頃から芽生えていたのかもしれません。

多くを学んだ「駒の会」

駒箱

インターネットを通じて徐々に情報を収集していた住谷氏ですが、しばらくすると「駒の会」に参加するようになります。この会は将棋駒の愛好家で構成されており、コレクションの公開や、自作駒の評価などをおこなっています。
住谷氏が「会に自分の駒を持って行ったのは5作目ぐらいだったと思います。新参者でも温かく迎え入れてくれ、聞いたことを教えてくださるし、アドバイスもたくさんいただきました」と語るように、名工の作品を見せてもらったり、さまざまなアドバイスをもらったりと、多くのことを学びました。
そして、職人として生きていくには、「駒だけじゃ食べていけないから、色々なものが作れる方がいい」ということも複数の会員から助言があり、住谷氏は指物(さしもの:板と板同士を仕口や組手と呼ばれる凹凸をさし合わせて組み立てる技法)の技術を習得するために、京都工芸大学校に進学することにしたのです。

木工芸、そして駒作りを極めたい

卓上三寸盤用脚付駒台 -栃杢拭き漆- 参照:https://sumi-76fu.com/stand/%e5%8d%93%e4%b8%8a%e4%b8%89%e5%af%b8%e7%9b%a4%e7%94%a8%e8%84%9a%e4%bb%98%e9%a7%92%e5%8f%b0%e3%80%80-%e6%a0%83%e6%9d%a2%e6%8b%ad%e3%81%8d%e6%bc%86/

住谷氏は京都工芸大学校で、駒作りに活かせるように漆や彫刻を学んだり、駒箱や駒台も作れるように指物の技術を習得しました。その後、企業への就職を経て、2018年に京都府亀岡市で独立を果たし、「将棋駒・棋具工房 木工芸 住谷」を設立しました。

自作の駒が第61期王位戦第4局に使用

脇息【楓 拭き漆】 参照:https://sumi-76fu.com/woodworks/%e8%84%87%e6%81%af%e3%80%90%e6%a5%93%e3%80%80%e6%8b%ad%e3%81%8d%e6%bc%86%e3%80%91-2/

大学卒業後からの住谷氏の活躍には大きく目を瞠るものがあります。2013年には第42回日本伝統工芸近畿展新人奨励賞を受賞、2014年第43回日本伝統工芸近畿展日本工芸会近畿支部長賞、2015年に第62回日本伝統工芸展初入選を果たし、2020年に日本工芸会正会員に認定されています。
また、将棋の駒では2020年、あの藤井聡太棋聖(当時)が木村一基王位(当時)に挑戦した第61期王位戦第4局において、住谷氏の駒が使用されています。

「道具」としての工芸品の美を追求する

第90作 巻菱湖書 彫埋駒 島黄楊糸柾 参照:https://sumi-76fu.com/shogi/%e7%ac%ac90%e4%bd%9c/

「工芸品は作り手の手を離れた時が完成ではありません。使い手に愛され、使われ、磨かれて、美しさや艶、深みや味が増していくものと考えています」と語る住谷氏。将棋駒だけではなく、駒箱や木工芸品まですべてに愛着を持って製作をしています。
駒作りも木工芸も「道具」を作ることと定義して、使う人に愛されるものを目指す住谷氏。妥協をせずに、一歩一歩丁寧に進むその姿に多くの人がさらなる期待を寄せています。

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