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職人ってなんですか。 この地球(ほし)の職人 ②

皮革製品職人だったケストナーのお父さんの話

職人ってなんですか。この地球(ほし)の職人 ① では、日本の職人について、主に「職人」や「職人気質」という言葉から語りました。では、②では、日本以外の職人について見てみましょうか。

「職人」という言葉をイメージするとき、筆者はドイツの作家・エーリッヒ・ケストナーの父親のエピソードを思い出します。(エーリッヒ・ケストナー:小説家・詩人)

ケストナーのお父さんは、とんでもなく高い技術を持った皮細工職人(カバン・ランドセル職人)だったのです。最上級の材料を使って、ものすごく頑丈なカバンや鞍(乗馬用鞍)・ランドセルを作れる、すこぶる腕が良い職人だったのですが、ケストナーのお父さんは腕が良すぎて、かなり苦労をして、結果的に職人をやめて勤め人になることを選択します。

なぜ自他共に認める、そんなに腕のいい職人が、職人であることをやめてしまったのでしょうか?

ケストナーのお父さんの作る製品は、カバンにしても鞍にしてもランドセルにしても、頑丈で良質すぎて、一生使えてしまうようなものだったのです。

つまり、1回買ったら一生使えるくらい素晴らしい長持ちな製品だったので、壊れてしまって買いに来るというお客さんがおらず、工房の製品の売れ行きが伸びなかったのだそうです。

おかげで、ケストナーの家は、子供のころはいつでも貧しかったのだそう。(結果的にお父さんは職人をやめ、よその工場で勤めに出はじめることになるのです)

「良質すぎるもの」を作るがゆえに、商売という面では、負けてしまった…という、皮肉すぎるエピソードです。

現代の消費主義社会では「きちんとした商品だけれど、耐用年数を超えたら適度に壊れる」そういう製品がたくさん売られていますよね。

職人さんのお給料や生活のためには、「あまりにも頑丈で素晴らしい良質な品物」は、商売で売る商品として成り立たないのかもしれません。(ケストナーのお父さんも、適度に壊れたりいたんだりするものを売ればよかったのでしょうか…そこは、良いものを作る職人としてプライドが許さないと思いますが。)

さて、ケストナーのお父さんの話からもわかるように、ドイツはものづくりが得意な国です。

ドイツのプロダクトには、家具も文具も化粧品も、抜きんでて良質なものが数多くあります。ドイツ製品=高品質という公式が成り立つほど、世界にもドイツ製品の品質の素晴らしさは知られています。

筆者の持っているドイツのイメージは…頑健で生真面目、実直で武骨な、そういう感じですが、なんだか、そういうドイツ/ドイツ人のイメージは、日本の職人に通じるところがありませんか?

ドイツの職人制度・マイスター制度

何を隠そう、「ドイツは職人大国」と言い切れるほどの国です。ご存じの方も多いかと思いますが、ドイツにはマイスター制度があります。

職人を目指す多くのドイツの若者が、その道のプロである「ゲゼレ」(職人という意味)という国家資格を取得したあと、その上の「マイスター制度」の試験を目指して学校に行ったり、職業現場で実務経験を積むのだそう。

マイスターとは名人・達人・巨匠という意味。ゲゼレを取得しただけでもプロフェッショナルと言えるでしょうけれど、その道の達人や巨匠と言う意味のマイスターを目指して、学んでいくのだそう。

マイスター資格が必要な業種は何種類もの職業があり、(※細かく分類があり、手工業マイスターの分類の中では41種類)塗装工・家具職人・パン職人・理美容師など、マイスター資格が無いと開業もできないのです。

 

ドイツでは義務教育の後(15歳くらい)には、その道のプロフェッショナルを目指してマイスター試験を目標に学校に入るのです。ドイツの多くの子どもたち・生徒たちは、なんのプロフェッショナルになりたいのか、15歳くらいまでにははっきりと意思を固めて、自分の意志で学校を選ぶということですね。

ドイツは、教育システムとして職人を育てていくことに特化した、職人大国ならではのスペシャリスト養成の特進コースが準備されているというわけです。

日本で何かの職人を目指そうと思うと、ちょっとどこへ学びに行けばいいのかがわからない業種もあったりしますが(伝統工芸の職人など)ドイツの教育システムならばなりたい職業、身につけたい技術がはっきりと決まりさえすれば、「マイスター資格」を目指して学校に入ればいいのですから、至極合理的な学び方ができそうですね。

ドイツが発祥のマイスター制度ですが、オーストリア・ベルギー・スイスにも同様の制度が存在しているとのことです。

日本も遅ればせながら、厚生労働省が平成25年度に始めた若年技能者人材育成支援等事業で、ドイツのマイスター制度に学んで「ものづくりマイスター制度」を創設したそうです。

技能の継承・後継者育成を目的とする制度だということですが、筆者はこの記事を書くためにマイスター制度について調べるまで、日本の「ものづくりマイスター制度」のことはまったく知りませんでした。

日本も、日本製品の高品質を支える職人の存在がもっと身近になって、職人を目指す子どもたちが増えていく未来がくればいいなと思います。

 

 

 

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