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日本のものづくりデザイナー54~プロダクトデザイナー 大日方 伸(おびなた しん)

3Dプリンタの可能性をデザインの分野に活かす


大日方伸氏 参照:https://100banch.com/magazine/52582/

大日方 伸氏は1996年東京の生まれです。慶應義塾大学政策・メディア研究科XD(エクス・デザイン)コース修了後、東京藝術大学AMC教育研究助手勤務。2021年にはデザインファブリケーションスタジオ「積彩」設立し、2022年には法人化をし、自らCEOに就任しました。主に工業などの分野で使用されている「3Dプリンタ」を着彩ツールとして捉えて、新たな色彩表現/デザインメソッドの創出にチャレンジしています。

3Dプリンタの既成概念を変えたい


《遊色瓶》みる角度によって色が変わる花瓶。その日の気分や花の色に合わせて色を変えて楽しむ、遊具のような花瓶シリーズ 参照:https://kuma-foundation.org/news/10491/

大日方氏が本格的に3Dプリンタと出会ったのは大学生のときでした。詳しく3Dプリンタのことを知ると、それがいかに製造や流通を変える可能性があるか、というところに感動さえ覚えたと言います。
しかし、デザインの分野に関しては3Dプリンタで作った作品に魅力を感じなかったといいます。「これじゃあぼくが感じてる3Dプリントのワクワク感に世界が追いついていかない」と語るように、大日方氏は「ワクワク感」を期待していたのです。
そこで、考えたのが、「じゃあまずは自分たちが3Dプリントでめちゃめちゃかっこいいモノをつくろう」ということ。特に3Dプリントの色彩表現に着眼して、「Color Fab」というグループを立ち上げ、見る角度によって色が変わるような3Dプリント技法などを開発をしていったのです。

デザインと生産性を両立させ起業


製作風景 参照:https://kuma-foundation.org/news/10491/

大日方氏は大学を卒業後、研究グループの仲間たちと一緒に起業、3Dプリンタの新たな活用方法を模索していくためブランドや建築、材料会社などと協力をしながら仕事をしています。
「会社のミッションは、3Dプリント製造の特注大量生産システムを構築することで、 ローカリティーや地域、個人が持つ固有性といった、その差の部分の価値を最大化することです」と語る大日方氏。『一品生産ができること』『1つ1つ形や色が違うものを届けられる』『低コストであること』という3Dプリンタの強みを活かして、デザインと生産性を両立させています。
このようなコンセプトを持ち、富山デザインコンペティション2020 グランプリ受賞、SICF22 出展、Innovative Technologies 2022 受賞など、徐々にデザイン界でも知られる存在となってきています。

3Dプリンタで個性を大切にする社会へ


YULA (EARRING) 参照:https://ququ.jp/products/tsubomi_earring-earth-essence

3Dプリンタでは、一つ一つ異なるプロダクトを大量に生産できるという大きな特徴があります。大日方氏はこの特徴を最大限に発揮して、「個性を大切にする社会」を実現しようとしています。

生産効率と個性の両立


KURULI (BANGLE) 参照:https://ququ.jp/products/o_bangle-earth-essence

前述した「デザインと生産性を両立」をさらに詳しく説明すると、「 生産効率と個性の両立」ことにも言い換えられます。画一的な製品は大量生産のために設計されたものですが、3Dプリンタを利用することで、一つ一つ異なるデザインのものを大量生産できるようになります。つまり、個性を尊重した各人に合わせたデザインを、低コストで誰でも手に入れることができるようになるのです。
それを実現したのが、「QUQU」というブランドです。自ら色を選択して、指輪やピアスを製造するというもので、まさにオンリーワンのものを製造するシステムと言えます。

場の個性も表現する


カカオハスク スピーチスタンド 参照:https://100banch.com/magazine/52582/カカオハスク スピーチスタンド 参照:https://100banch.com/magazine/52582/

個人の個性を表現することに加えて、大日方氏は「 場の個性も表現する」ことにも挑戦しています。例えば、菓子メーカーの明治とともに製作した「カカオハスク スピーチスタンド」は、チョコレートの原料であるカカオの廃棄部分を材料とした演説台です。主に社長が演説をするときに使用するものです。
これこそ、「チョコレートの明治」という起業アイデンティティと合致した「場の個性」と言える作品です。また、不用品を材料に使用するというサスティナビリティな意味合いも持たせています。
このように、 大日方氏は3Dプリンタ特徴を最大限に活かすことで、今までにない「個人」や「場」の個性を尊重した社会の実現に向かって歩み続けています。

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