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空想の世界を現実に再現する、フィギュア造形師の世界

皆さんは、『造形師』『原型師』といった言葉を耳にしたことはありますか?

その分野に明るくない人にとっては、なかなか耳馴染みのない言葉ですよね。

造形師/原型師は、フィギュアや人形・模型の造形を制作する職業・人物のことを指します。

この記事を読んでいただいているあなたの自宅にも、少なくとも1つは何らかのアニメや漫画、映画のキャラクターのフィギュアなどが飾ってあるのではないでしょうか?

そんなフィギュアは、高い技術と、テクノロジーを駆使して作られているんです。

本記事では、フィギュア造形にスポットをあてて、フィギュアの歴史から、その製法、そして、作り手である造形師についても詳しく掘り下げていきます。

日本でのフィギュア文化と歴史

まず初めに、フィギュアの歴史と、文化について触れていきましょう。

日本は、フィギュア産業の走りであるといっても過言ではありません。

日本のフィギュア産業は、1970年代が発端と言われています。日本で『ウルトラマン』や『仮面ライダー』などのヒーロものが大流行し、それらのキャラクターを象ったソフビ人形が誕生し、大ヒットしました。これが、日本のフィギュア文化の元祖だと言われています。

1980年代に入ると、『ガンダム』などのアニメーションが大ヒットし、世間のフィギュアに対しての認識と需要はますます高まっていきました。

当時のフィギュアは、子供のためのおもちゃという側面が強く、造形の再現度は決して高いとは言えませんでした。

しかし、1990年代のセーラームーンなどの美少女フィギュアの流行や、エヴァンゲリオンなどのロボットアニメの影響とともに、フィギュア需要の年齢層が大きく広がり、フィギュア造形師の数も増え、その技術もより高まっていったことで、フィギュアはよりいっそう、世間に大きな影響を与えていきました。

フィギュア作りの要!造形師とは?

出典:Anime 

続いて、造形師/原型師についてみていきましょう。

前述したように、造形師は人形やフィギュア・模型のパーツを製作する職業を指しますが、近年では、原型師という言葉も同義として使われる傾向にあります。

しかし、具体的に言えば、両者にはわずかな違いがあります。

原型師とは元来、工場で量産が可能な原型やパーツを製作する職業なのに対して、量産の難しい、手作業での造形・着色等を行う職人を造形師と呼びます。

機械などを用いることができる初期工程を原型師がまかない、造形師は造形から仕上げまで、全て手作業で行うのでアーティスト的な側面が強くなります。

近年では、原型師/造形師はひとくくりに『モデラー』などとも呼ばれ、3DプリンターやCADのような立体設計ツールがより身近になったことで、造形師のなかにも、原型師に近しい製法で製作を行う職人も増えてきているため、造形師/原型師が一元的に同じ意味合いで表現されているのかもしれません。

前述したように、造形師は人形・フィギュアなどの模型を造形する仕事です。

造形師は、製作を依頼されると、クライアントとともにどんなフィギュアを製作するのかについてを話し合い、原型の制作に取り掛かります。

フィギュア造形師には、制作の技術だけではなく、クライアントの要望を確実に引き出すためのヒアリング能力や、融通性も必要になります。

全て自らの手で作り上げる『アナログ造形』

造形師の業務内容の中で、少しだけ造形の技術については触れましたが、ここからはより具体的に造形師の技術や、造形の過程について詳しくみていきましょう。

造形師の手法は、大きく『アナログ造形』と『デジタル造形』の二つに分けることができます。

アナログ造形は、場合により『主原型』と呼ばれることもあり、ベテラン造形師がこの製法を用いることが多く、その文字通り、PCや3Dプリンター等を用いず、手作業で造形を行います。

アナログで造形を行う場合は、まずは企画(どのような作品を製作するのかのアイデア)を固めます。

続いて、パテやワックスなどの原型に必要となる材料をひとしきり揃え、ポリパテ造形という技法を用いて、『パテ』と呼ばれる粘土のようなものを元に、骨組みなどの土台となる部分を製作し、彫刻刀やヘラなどで造形を行う手法で成型を行なっていきます。

場合によっては、造形師自身で縫製を行ったり、フィギュアの着色を行う場合もあるようです。

こういった着手範囲の広さも、原型師や造形師が同義として扱われる理由のひとつなのかもしれませんね。

このように、アナログ造形は全て手作業で行うため、クオリティの高いものを作るためには、手先の器用さや空間把握能力が問われることに加えて、造形に時間がかかってしまうのがデメリットとして挙げられます。
しかし、その分細部までこだわった繊細な造形を行うことができ、ベテラン造形師であれば、現在でもアナログ造形を行う場合が多いようです。

また、アナログ造形は道具や素材などを合わせて数万円で揃えることができますので、趣味として造形を初め、そこから転じて造形師になる方も少なくはありません。
親しみやすいとも言えますが、シンプルな技法である分、個人で業務を受託したり、販売できるようなクオリティに仕上げるためにはかなりの技術と経験が必要と言えるでしょう。

最新技術を駆使した『デジタル造形』

出典:CEMEDINE

アナログ造形は、手先の器用さや、空間把握能力が非常に問われるため、才能や長年の知識がないと難しいですが、デジタル造形に関しては、PCと、専用のソフトを使用することで、複雑な造形を誰でも製作することができます。

例えば、アナログで造形する際に、ミスしてしまった箇所のやり直しを行うとなると、再びパテを足したり、削ったりの作業が必要となり、かなりの工数を消費してしまいますが、デジタル造形であればキーボード操作一つで前に戻すことができたり、取り消しや複製作業も容易です。

また、左右反転のパーツを制作する場合、アナログであれば各パーツごとに作る必要がありますが、こちらもデジタルであれば、複製と反転の作業のみで行うことができます。

アニメキャラクターや映画のキャラクター、美少女フィギュアなどは、2次元のキャラクターを忠実に3次元に再現する必要があるため、再現度が非常に需要になります。

その際、アナログであれば写真を撮影し、PCに取り込んで原画像と比較といった手段が取られますが、デジタル造形であれば複数パターンを作成し、比較・修正を行なったり、実際の画像と重ねながら設計、などもできてしまいます。

このように、相対的に見ると、アナログ造形よりもデジタル造形のほうが工数や効率の面で考えるとかなり優れているように思えます。
確かに、デジタル造形は格段にスピードも上がり、量産にも向いているかとは思われますが、アナログ造形にも、それでしか出せない手作り感や、唯一無二の味のようなものは確かに存在するので、どちらが優れているとも言い切れません。

また、デジタル造形は3DプリンターやCAD、PCなどの機材が高額になりますので、それらを揃えようとなると、かなり開始までのハードルが高くなります。

近年では、アナログ造形専門であった職人も、デジタルと並行しながら造形を行ったりというケースも増えてきていますので、まずは道具や素材が集めやすいアナログ造形から行うのがいいかもしれませんね。

デジタル造形はアナログ造形とは違い、手先の器用さは関係ないと言えますが、双方ともに、フィギュア造形に対しての幅広い知識が求められます。

造形師(原型師)になるには?

フィギュア造詣師には、手先の器用さや、立体的な空間把握能力、高い創造力などが求められる難しい職業と言えます。

また、造形師はフィギュアの制作を依頼されるクライアントあってこその仕事となりますので、的確にクライアントのイメージを汲み取るコミュニケーション能力や、それを形にする力も必要になります。

造形師になるための専門的な知識の基礎は、専門大学や、美術大学で体型的に学ぶことができますが、造形師にはなにか特別な資格が存在するわけではありませんので、いかに高い技術を習得できるかどうか、そして、それをいかに実績として残すがどうかが鍵になります。

独学、あるいは副業から派生して志す方も近年では増加傾向にありますが、必要な素養を独学で養うのは難易度が高いため、やはり正当なカリキュラムを提供してくれる専門学校・美術学校に通うのが良いと言えるでしょう。

現代の造形師の形態としては、『会社員』と『フリーランス』のいずれかで活動をしている場合がほとんどです。

しかし、その比重は制作会社に勤め、サラリーマンとして造形師を行う場合が非常に多いです。

制作会社の造形師として経験を積み、その後フリーランスとして独立する造形師も近年では増えてきているようです。

独立した造形師は、フリーランスとしてフィギュア製作を行い、自作のフィギュアを展示会などに出品することで、メーカーや制作会社にアピールをする場合も多いようです。

これらのことから、高い技術と、それに付随するコミュニケーション能力が必要なかなり難しい職業であることが伺えますね。

最後に

いかがでしたか?

今回は、フィギュアの原型や、制作を行う、造形師・原型師についてご紹介しました。

今や、我々の身近なモノとなっているフィギュアですが、そのフィギュアがどうやって生まれているのか、そして、職人のこだわりなどについて、少しでも知っていただけたら幸いです。

日本のフィギュア産業は、アニメや映画などの素晴らしさを全世界に広める上で、大きな役割を果たしているのではないでしょうか。

筆者が海外で生活をしていた際、あるアニメのフィギュアをお土産として友人にプレゼントすると、そのクオリティと再現度の高さに、ものすごく驚いていたのを思い出します。

それほど、日本のフィギュアの文化は奥が深く、高い技術を有しているということかもしれません。

この記事が、自身でのフィギュア制作や、最高のフィギュアとの出会いのきっかけになれば幸いです。

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